曇りがちで、少し肌寒い日曜日。
昨日(10月11日)は、加古隆さんのピアノコンサートが催されるサントリー・ホールへ。
サントリー・ホールは一度行ってみたいコンサート会場だった。
上場しない企業であるサントリー・・・鳥井家・佐治家の威信の象徴であろう・・・と勝手に思っているサントリー・ホールは、格調高い・・・これぞまさに、日本の正統なる芸術至上主義の日本屈指の音楽の殿堂。
最近できた、ヘンテコな芸術至上主義の劇場とは一線を画す・・・というのは、その伝統である。
テレビ朝日の前を通り抜けて、高層ビルの林立する間。
その音楽の殿堂は、厳かに存在していた。
開場10分前に到着した相方と私は、ホール前の広場の噴水の脇に腰を掛けて、開場を待った。
少し冷たい風は、秋の深まりを告げるようだ。
開場を知らせるパイプオルガン。
案内のスタッフは、フロック・コートのいでたち。
欧州風の雰囲気たっぷりだ。
二階後中央後方席で、開演を待つ。
音の反響も抜群で、ピアノの音が、こんなにもキラキラするものなのか・・・(ピアニストにもよるのかもしれない。音楽については、自分の感じることしか書けないので、間違っているかもしれないけれど)。
加古隆さんの音楽は、絵画的と言えるかもしれない。
音が、視覚を生み出す。
聴覚が視覚を浮かび上がらせるのだ。聴覚を視覚に結びつける・・・音と画像を一体化させる。音を聴いて、絵画(或いは映像)を浮かび上がらせることができる稀有なアーティストだと改めて思った。
コンサートは、二部構成で、第一部は、ピアノソロ演奏。
二部は、スクリーンを用いて、パウル・クレーと葛飾北斎の絵を上映しながら、耳と目で楽しむ趣向。
欧州と日本の融合。音と絵画の融合。
不思議な感覚のコンサートで、音の持つ絵画性、絵画もつ音楽性が、まさに溶け合う。至福のひとときだ。
加古隆さんといえば、やはり、1990年代、某国営放送が、放映した『映像の世紀』で使われた『パリは燃えているか』だと思う。
写真ではなく、動画がとらえた20世紀初頭。
科学技術の進歩とともに、繁栄そして戦争に向かった20世紀を映像と・・・そして加古隆の音楽が浮かび上がらせた。
オープニングで演奏された初期作品『アクアブルー』は、初めて聞いたけれど、演奏中、深海にいるような、水の中で、たゆたうような感覚になった。
演奏後、タイトルを聞いて、やはり、『水』だったのね・・・と音楽の中に『水』を感じさせる・・・音楽とは乖離しているはずの物質の『水』が、音楽の中で、実物以上に融合していて、まさに感覚の『水』を、感じとった瞬間でもあった。