3月30日(水) 晴
穏やかで温かい日。 名張の桜の開花は五分咲き程度だ。
以前から、シルバー人材センターの佐藤篁理事に「稲森宗太郎の生家やお墓にご案内しますよ」と誘ってもらっていたので、今日、旧市内を散策した。
最初に、お墓のあるという曹洞宗・徳蓮院をお訊ねしたものの、「うちの檀家さんに、稲森家はありませんね」とご住職が。
市の教育委員会で西方寺と教えられ、境内の一角に稲森宗太郎のお墓もある、と知った。
後日詣でることにして、生家をお訪ねした。
折よく、跡取りの義叔母に当たる方がおられて、宗太郎のことを丁寧に教えてくださった。
夭折の歌人・宗太郎が死の4日前に詠んだとされる「水枕九首」のうちの、『水まくら うれしくもあるか 耳の下に 氷のかけら音たてて游(およ)ぐ』を、義叔母さんと唱和するように謡って、個人を偲ばせていただいた。
墓所の一角を垣根で囲って、中に、名張藤堂家十三代のご当主の墓が、静まっておられる。
ご住職夫妻が、丁寧に管理・清掃しておられ、それでも重荷のように見受けられた。 「国も市も、文化財にお金をださないのですね」。無力な私は、呟くしかなかった。
「地域の人たちで運営しておられる『やなせ宿(じゅく)』で美味しいそばを食べましょう」。 佐藤氏に誘われ、白壁の土蔵づくりの蕎麦どころに落ち着く。
蕎麦湯を勧められ、「お釜の底からかき混ぜてくださいね」と注文を付けたら、ご亭主が「ウチは、茹で汁に節めんを混ぜて、蕎麦湯を作っています」。
だから、一味違いますよ、と目で語っておられる。
確かに、手打ちの美味な蕎麦であった。
帰り道はどうしても歩きたくて、松見橋で佐藤氏の車から降ろしていただき、5分咲きの中央公園のさくら道を歩いて帰った。
富貴ヶ丘の近くで、突然後ろから声がかかった。
「こんにちは」。 追い越して振り返り、「良いお天気ですね」と。
「富貴ヶ丘の方?」、「いえ、その先の下比奈知です」
79歳まで施設の食事作りをして来られ、「80歳まで働きたかったのに!」
道すがら自己紹介をしたら、「えっ、同じ病気ですね!」、「心臓にステントを入れておられるのも、おんなじ♪」
同年代で動くことの好きな二人はすぐに意気投合し、いつも一休みするコンビニのイートインで100円珈琲で、心を通わせた。
偶然、常連の田中さん夫妻も来られ、「あら、あら、あら」
午後の日差しが柔らかく差し込み、小さな出会いが小さな幸せを運ぶよ。
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