「やっぱり歳には敵わないわね」

　昨夜、余りに暑くて目が覚めた。部屋の温度は２６度あり、湿度は５８％を示していた。パジャマが汗でびっしょり濡れている。年齢から来るものなのか、何か病気が原因なのか、とりあえず記録しておこうと時計を見た。午前５時０５分だった。

　カミさんはいつも通り、友だちとランチに出かけたので、私もいつも行く喫茶店で玉子サンドとコーヒーを頂く。この店は年寄りの憩いの場で、老夫婦が２組と高齢の女性が３人が別々に座っていた。午後１時を過ぎると、高齢の男性客がやって来て、テーブル席を囲む。

　今日は全員で７人、いつもよりもひとり少ない。多分、ご近所なのか、同じ中学校の卒業生なのか、「誰々はどうしてる？」という話から始まる。「アイツもカミさんの世話で大変だなあー」と言ったかと思うと、「世話されるようになったらおしまいさ」と言って、笑ったりしている。

　家に帰ったら、先輩のオクさんから電話が入っていた。急いで電話をすると、「ごめんなさいね。どうしているかと思って」と言う。ダンナとは古くから付き合いがあるが、オクさんから電話をもらうことは滅多に無いので、先輩に何かあったのかと余計なことを考えてしまった。

　先輩はアルツハイマー型認知症で、歩き方もヨボヨボでおぼつかない。「今日は合唱の打ち合わせで出かけて行ったの」と言うので、外へ出ようとする気持ちがあってホッとした。オクさんの方は凛としてキレイな方だったが、背骨が曲がる病気になり、確かどこかで手術をされたと聞いた。

　「私はいろんな病気で、あちこちにメスが入っているわよ」と言われるので、「メスだからメスが入るんですよ」と笑わせるつもりで言ったけれど、「えっ、どういうこと？」と言われてしまった。「やっぱり歳には敵わないわね。あなたも元気でいてね」と励まされた。