俳句大学投句欄よりお知らせ!
〜季語で一句 33 〜
◆『くまがわ春秋』8月号が発行されました。
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永田満徳:選評・野島正則:季語説明
季語で一句(R4.8月号)
水無月(みなづき) 「夏-時候」
大工原一彦
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水無月や聴診器から水の音
【永田満徳評】
「水無月」をここでは水が無いから「水無月」だとする説を採ってみる。診察室の情景だろう。暑いさなかに「聴診器から水の音」が聞こえているという。「水無月」にふさわしい涼やかな診察風景を捉えている。
【季語の説明】
旧暦六月の異称。「無(な)」が「の」にあたり、「水の月」である説や田に水を引く時期で「水無月」という説など。本格的な暑さとなり、農家では稲の生育を待つばかりの農閑期となる。酷暑にあえぎながらも、夕立が起こり、涼しさに秋の気配を覚える時期でもある。青葉の茂る時期なので「青水無月」としても詠まれる。
蚊(か) 「夏-動物」
西村楊子
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蚊の羽音止みて刺さるる覚悟かな
【永田満徳評】
「蚊の声」は蚊の羽音。蚊に刺されると、かゆいので、嫌われる虫のひとつ。「蚊の羽音」がしているうちはいいが、しばらくすると、止む。刺されるかもしれない瞬間を「覚悟」という言葉で言い留めている。
【季語の説明】
「蚊」はハエ目に属する昆虫。世界に存在し、うち日本は100種程度である。ヒトなどから血液を吸う吸血動物であり、種によっては各種の病気を媒介する衛生害虫。夜分出ることが多いが、藪蚊などは昼も出る。蚊帳を吊ったり、蚊遣火を焚いたりして、蚊が近づくことを防ぐ。一団になって飛んでいることを「蚊柱」という。
黴(かび) 「夏-動物」
大津留直
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黴臭き聖書繙き懺悔する
【永田満徳評】
「黴」は「古くなる」などの意味があるが、有益な種類の黴もある。「聖書」であればこそ、古くなって、黴臭くなればなるほど価値が出てくる。「懺悔する」ことで、キリスト教を大切しようとしているところがいい。
【季語の説明】
「黴」は梅雨時の高温多湿化で生育するものが多いため、夏の季語となる。黴が発生しやすい4大条件は、温度、湿度、酸素、栄養で、ホコリや食べカス、皮脂や垢などの栄養分が揃えば、どんな場所でも繁殖する。梅雨の季節を象徴するが、味噌醤油を製造する麹黴やペニシリンを作る黴など、有益なものもある。