【永田満徳(みつのり)】 日本俳句協会会長代行 俳人協会幹事 俳人協会熊本県支部長 「文学の森」ZOOM俳句教室講師

「火神」主宰 「俳句大学」学長 「Haïku Column」代表 「秋麗」同人 未来図賞/文學の森大賞/中村青史賞

〜季語で一句 33 〜 『くまがわ春秋』8月号

2022年08月01日 00時57分04秒 | 月刊誌「俳句界」
俳句大学投句欄よりお知らせ!
 
〜季語で一句 33 〜
 
◆『くまがわ春秋』8月号が発行されました。
◆Facebook「俳句大学投句欄」で、毎週の週末に募集しているページからの転載です。
◆お求めは下記までご連絡下さい。
・info@hitoyoshi.co.jp 
 ☎ 0966-23-3759
 
永田満徳:選評・野島正則:季語説明
季語で一句(R4.8月号)
 
水無月(みなづき)   「夏-時候」
大工原一彦
水無月や聴診器から水の音
【永田満徳評】
「水無月」をここでは水が無いから「水無月」だとする説を採ってみる。診察室の情景だろう。暑いさなかに「聴診器から水の音」が聞こえているという。「水無月」にふさわしい涼やかな診察風景を捉えている。
【季語の説明】
旧暦六月の異称。「無(な)」が「の」にあたり、「水の月」である説や田に水を引く時期で「水無月」という説など。本格的な暑さとなり、農家では稲の生育を待つばかりの農閑期となる。酷暑にあえぎながらも、夕立が起こり、涼しさに秋の気配を覚える時期でもある。青葉の茂る時期なので「青水無月」としても詠まれる。
 
蚊(か)         「夏-動物」
西村楊子
蚊の羽音止みて刺さるる覚悟かな
【永田満徳評】
「蚊の声」は蚊の羽音。蚊に刺されると、かゆいので、嫌われる虫のひとつ。「蚊の羽音」がしているうちはいいが、しばらくすると、止む。刺されるかもしれない瞬間を「覚悟」という言葉で言い留めている。
【季語の説明】
「蚊」はハエ目に属する昆虫。世界に存在し、うち日本は100種程度である。ヒトなどから血液を吸う吸血動物であり、種によっては各種の病気を媒介する衛生害虫。夜分出ることが多いが、藪蚊などは昼も出る。蚊帳を吊ったり、蚊遣火を焚いたりして、蚊が近づくことを防ぐ。一団になって飛んでいることを「蚊柱」という。
 
黴(かび)        「夏-動物」
大津留直
黴臭き聖書繙き懺悔する
【永田満徳評】
「黴」は「古くなる」などの意味があるが、有益な種類の黴もある。「聖書」であればこそ、古くなって、黴臭くなればなるほど価値が出てくる。「懺悔する」ことで、キリスト教を大切しようとしているところがいい。
【季語の説明】
「黴」は梅雨時の高温多湿化で生育するものが多いため、夏の季語となる。黴が発生しやすい4大条件は、温度、湿度、酸素、栄養で、ホコリや食べカス、皮脂や垢などの栄養分が揃えば、どんな場所でも繁殖する。梅雨の季節を象徴するが、味噌醤油を製造する麹黴やペニシリンを作る黴など、有益なものもある。
コメント
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