俳句大学投句欄よりお知らせ!
〜 季語で一句 37 〜
◆『くまがわ春秋』12月号が発行されました。
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永田満徳:選評・野島正則:季語説明
季語で一句(R4.12月号)
露(つゆ) 「秋-天文」
大工原一彦
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「さよなら」とクルマの窓の夜露かな
【永田満徳評】
「露」は〈儚さ〉という要素がある。永遠の別れではなくて、単なる、その場の別れであろう。「露」という季語によって、二人の関係があまり長続きのしない、危ういものであることをおもしろく表現している。
【季語の説明】
「露」は空気中に含まれている水蒸気が放射冷却などの影響で植物の葉や建物の外壁などで水滴となったもの。物に露が着くことを結露という。一日の内でもっとも気温が下がるのは夜明け前。露を見つけやすいのは朝で、朝露といわれる。夜になってからでも、露が降りることも少なくないが、夜間の露を夜露という。
冬の山(ふゆのやま) 「秋-地理」
桧鼻幹雄
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相棒はトリスの小瓶冬の山
【永田満徳評】
「冬の山」の楽しみは登山であろう。冬の山の寒さは尋常ではなく、ウイスキーで体は温めようとしているのである。「トリスの小瓶」を「相棒」と呼び、切って切れない関係を示し、一息入れているところがいい。
【季語の説明】
「冬の山」の魅力は強風が作り出す独特の景色にあり、空気が澄んでいて遠くまでよく見える。本格的な冬に向かうと、日本の山は日本海側を中心に、深い雪に包まれる。夏山からは想像できないような異次元の銀世界が広がり、神々しさ、荘厳さを感じる。雪が被らない低山では、草木が枯れ、殺伐とした姿となる。
鷹(たか) 「秋-動物」
茂木寿夫
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鷹一羽千羽の野鳥飛び立てり
【永田満徳評】
「鷹」は鋭い目つきで遠くの獲物を見つけ、捕えることができる。鷹は多くの野鳥にとって恐怖そのものである。「一羽千羽」と数詞で、鷹の出現によって多くの野鳥が右往左往している様を的確に描いている。
【季語の説明】
「鷹」はタカ目タカ科。昼行性猛禽の内、中・小形のものの総称。曲がった鋭い嘴、脚には強い爪を持つ。鷹といえば「大きい」「かっこいい」「強い」といったイメージがあるのは、肉食性であり、他の動物を捉えて食べる習性があるからであろう。古来、鷹狩が冬の季語として定着していたから、鷹も冬となったという。