【永田満徳(みつのり)】 日本俳句協会会長代行 俳人協会幹事 俳人協会熊本県支部長 「文学の森」ZOOM俳句教室講師

「火神」主宰 「俳句大学」学長 「Haïku Column」代表 「秋麗」同人 未来図賞/文學の森大賞/中村青史賞

大慈禅寺かわしり句会

2018年06月19日 06時25分33秒 | 俳句大会
大慈禅寺かわしり句会
― ジャンルをこえて楽しむ ―

今回はじめて「開懐世利六菓匠 お菓子ふれあい絵巻 春の陣 in大慈禅寺」(同実行委員会主催)と題して1月27、28日に大慈禅寺(熊本市南区野田町1丁目)においてさまざまな催しが開かれた。お菓子の実演、工芸菓子展示、お茶席、座禅、講演会、ミニコンサートなどがあった。
27日にはその催しの一つである「大慈禅寺かわしり句会」(同実行委員会主催)に実行委員のひとりとして参加した。当日は予想をこえて39名が句会に参加した。大慈禅寺法堂内でもコートを脱げないほどの寒さだったが、熱い意見が飛び交った。
句は座の文芸と言われる。本句会では座ならではの楽しみや学びが展開された。しかも俳句と川柳の枠をこえた句会として行われた。
選者も俳人協会幹事の永田満徳・熊本県川柳協会顧問の黒川孤遊両氏を迎えて画期的なものとなった。互選はもとより、互評会という自由な発言の場をもうけられたことも特徴である。俳句と川柳の違いをこえて楽しむことを目的とした雰囲気が感じられた。同じ音律をもつ文芸が座を共にすることができたことはこれからの両ジャンルにとって幸せなことだと前向きにとらえたい。
【各 賞】と選者の評
◆大慈禅寺賞
百態の仏に見られ背を伸ばす
 上村 千寿
 季語はないが10点という高得点を得た。吟行詠ならではの気付きに共感を得られた。
◆開懐世利六菓匠賞
冬天や菓匠の木型の黒びかり
 光永 忠夫
 木型の黒びかりが代々続く匠の歴史を物語り、冬天と響き合っている。
◆熊本県俳句協会賞
春を待つ少し濃い目のカプチーノ
吉岡 靜生
 カタカナ名詞が軽やか。これから春に向かう気分がよく出ている。
◆熊本県川柳協会賞
生きる音死ぬ音ひびく鐘の音
 黒川  福 
 人みな無言で受け入れる納得の句である。
◆月刊「俳句界」文學の森賞
開懐世利の春を呼び込む匠の手
北村あぢさゐ 
 この催しを明るく確かに表現している。
◆選者(永田満徳)賞
それぞれの轍交わる禅の寺
  黒川 孤遊
 寺の境内に入る車のそれぞれの轍に生き方を重ね合わせている。禅という措辞が季語の役割を果たして効いている。
◆選者(黒川孤遊)賞
日脚伸ぶ終の住処の話など
  眞渕富士子
日脚伸ぶという季語の斡旋が秀逸で、「など」という措辞にも共感できる。
〔高点句〕選外
梵鐘の一打一音日脚伸ぶ
           加藤いろは
禅僧の破顔一笑寒明くる
           永田 満徳
日ごろ俳句と川柳の両方を楽しむ者として、このレポートを書ける喜びを感じている。そしてわたしの周囲にはその両方を学び楽しむ仲間が少なくはない。共に始まりは同じ軽みの文芸である。今回はじめて俳句と川柳に触れた方も、これからも気軽に楽しんでいただけるなら幸いなことである。そして最近は外国語でも二行で書く取り合わせをもつHAIKUが広がりつつある。自分の世界に閉じこもることなく、短文芸の未来に目を向けたい。
(レポート・西村楊子)

参考

地元では大慈禅寺とよばれることが多いが、正しくは大慈寺という。この寺は夏目漱石と種田山頭火にもゆかりの寺である。
漱石の句に「大慈寺の山門長き青田かな」がある。五高教師としての在熊4年3カ月の間に訪れたのかもしれない。しかし現在は寺の周囲は家が建て込み、「長き青田」の描写は想像するしかない。
 また、寺の山門を入りしばらく進むと右に種田山頭火の句碑が建立されている。碑には「まつたく雲がない笠をぬぎ」と刻まれている。山頭火が得度した報恩寺(熊本市)の住職がのちに大慈寺の住職となったことから、山頭火を偲ぶ人々により昭和27年に句碑が建てられた。現在大慈寺は熊本地震で被害をうけて修復中であるが句碑は無事だった。
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