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『外務省に告ぐ』(その12)

2016年08月27日 | O60→70(オーバー70歳)
【336ページ】
(チフスで)死ぬ直前に母は、やせ衰えた前川大尉からこう言われたという。
「俺はもうすぐ死ぬ。いいかよく聞け。俺が死んだら沖縄は負ける。日本も負ける。米軍は女子供を絶対に殺さない。捕虜になれ。そして生き残れ。将来、いい男を見つけて結婚し、子供をつくるんだ。こんな戦争に負けたぐらいで日本は滅びない」
【338ページ】
母は自決用に渡されていた2つの手榴弾うちの1つをポケットから取りだし、安全ピンを抜いた。信管(起爆装置)を洞窟の壁に叩きつければ、4~5秒で手榴弾が爆発する。母は一瞬ためらった。そのとき、母の隣にいた「アヤメ」という名の北海道出身の伍長が、
「死ぬのは捕虜になってからでもできる。ここはまず生き残ろう」
と言って手を上げた。
母は命拾いした。

[ken] 前回の続きとなる記述ですが、沖縄の民間人に対して、すべての日本兵が無謀な自決を強要したのではなく、佐藤優氏の母を救った兵士たちも実在したのですね。死を覚悟した前川大尉の言葉は、自暴自棄になりそうな状況にあって、佐藤優氏の母に生き残れと説きました。さらに戦況が厳しくなったときには、北海道出身の伍長が一緒に投降してくれます。まさに、佐藤優氏のお母さんは命拾いをしたのです。極限状態にあっての生き死には、運命的な人と人の出会いに影響されるような気がしました。(つづく)
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