昨日は老朽原発再稼働をめぐり大詰めの福井県議会。
午前中は、厚生常任委員会協議会で県原子力安全専門委員会の報告書を安全環境部長、副部長らから報告をうけ審議。ひきつづき議会運営委員会。
昼休みには、県庁前に集まった再稼働反対の市民団体のみなさんにあいさつ、私もアピール。
午後は本会議でコロナ対策予算案などを可決、再稼働反対などの請願60件を厚生常任委員会に付託。
厚生常任委員会では、請願を3回にわけて審議。
本会議を再開し、田中厚生常任委員長の報告をうけ、討論。私は再稼働反対など59件の請願不採択、再稼働推進1件採択に反対討論をおこないました。
また、民主みらいからの決議案提案、自民党公明党などからの意見書提案があり、私はそれぞれ賛成、反対討論をおこないました。
なんと杉本知事は、今日、美浜、高浜原発を視察し、来週にも経産大臣と面談するとか。コロナ緊急事態のもとで危険な老朽原発再稼働推進は許されません。
今回、議会や県庁に声を届けていただいた皆さんの気持ちを忘れずに、引き続き頑張ります。
皆さんの請願書などの内容には全員協議会などで少なくない議員の発言にも反映する結果をうんだと思います。
また、厳しい日程設定のなかで、住民の声にこたえる議会運営に尽力された議会局はじめ関係者の皆さんにも感謝申し上げます。
福井新聞より
私の討論骨子です
■請願についての討論
今回、40年超老朽原発の再稼働にたいして、短期間に多くの県民の皆さん、また関心を寄せる他県のみなさんから多くの請願、陳情、要望、そして署名が県議会に届けられました。県庁にも届けられました。これらの切実な声にしっかりと向き合い、判断する責任が県議会と議員にはあります。
私は、請願第22号から請願第81号までのうち80号をのぞく59件は高浜1,2号機、美浜3号機の40年超老朽原発の60年運転に反対または慎重審議をもとめるものであり採択を、請願第80号は老朽原発再稼働を求めるものであり不採択をもとめます。
以下、請願書の内容を中心に採択を求める理由を述べます。
1,新型コロナでは福井県も昨日、緊急事態を発出した。関西でも緊急事態である。全協での資源エネルギー庁の説明の際にも、こんな時期の老朽原発再稼働は見合わせるべき、と主張したが社会環境はさらに悪化している。エネ庁説明者は、「安全対策の確認や避難計画の準備ができたうえで、再稼働をすすめていただきたい」などと答弁したが、そういう準備が整っているとはとてもいえない。
県全体で907台のバスを確保しているというが、コロナと原子力災害の同時事故では避難することも、避難所運営も、医療機関も深刻な事態に拍車をかけることは明白。いま大阪では医療崩壊で入院できないことによる在宅死がでている、兵庫や京都でも深刻になりつつある、福井県でも陽性者急増のもとで、このまま推移すれば入院できなくなる事態も想定される。こういう時期に県議会がリスクを大きくする判断をすべきでない。
福井の原発で被災地となりかねない地元住民、周辺自治体住民の声は、頼りにならない避難計画の中では再稼働しないで!が多数。
2,福島原発事故の教訓を忘れてはいけない
福島県の公式発表でも、いまだに県外避難28372人、県内避難7093人。
元福島県議会議長の佐藤憲保氏は原発すべて廃炉について、安全神話に侵され続けてきたという反省もふくめてやむを得ないんでないかという決断だった。100%とはいわないが、県民の大多数は原発との共存は終わりだという判断をしていた」と今年2月のインタビューで語っている。
本州で原発を動かしているのは福井だけ。40年超原発の60年運転にすすもうとするのは全国初。福井が第二の福島にむかいつつあるとの懸念が県民の中に広がる。
さらに、平成16年の美浜3号機配管破裂事故で11名が死傷したことも忘れてはならない。全協でも資源エネルギー庁に指摘したが、配管そのものが検査されていなかった問題とともに、定期検査短縮で利益をあげようとした関西電力が運転中に下請け作業員に準備作業させたがために死傷者がでた。今回、国が検査のあり方を検討する中で、運転しながら検査をおこない検査期間の短縮を検討、などとでていたが、老朽原発の60年間延長、さらには80年間運転延長の画策までされている。福井県民がどこへ連れていかれるか、大変な議論がはじまっているなかで、ここで議会として老朽原発再稼働を止める判断が必要だ。
3,福井県としての県民説明会開催をおこなうべき
県主催での説明会開催は西川県政ではなかったことであり評価するが、県民がもっとも聞きたいのは、知事をはじめ県庁からの説明である。安全性や避難計画などの問題で県が説明する県民説明会を開催すべき。
知事、櫻本副知事は、たくさんの請願や要望をされている県民運動団体との面談を拒否したが、国や関西電力など推進側とは繰り返し話をするが、苦言を呈する県民団体とは一度も面談すらしないのはあからさまな推進のとりこに陥った、と言わざるを得ない。
4,基準地震動の問題
昨年12月4日、大阪地裁は大飯原発3,4号機の設置許可を取り消す判決。その内容にしたがえば、「ばらつきの考慮」をすれば、美浜3号機は現行基準地震動993ガルが約1330ガルに、高浜1,2号機では現行700ガルが1100ガルに跳ね上がり、原子力発電所機能に重大な損傷が生じかねない。
県民説明会でも規制委員会の説明者は、繰り返しの強振動は検証していない、などと答えたが、まさに耐震設計された機能が最初の地震動でダメージを受ければ、その後の複数回の強い揺れによって安全機能が喪失する恐れがあることは明らかです。
5,行き場のない使用済み核燃料増大
使用済み核燃料の中間貯蔵施設について関西電力は2021年3月時点で11900回の説明を電力消費地中心におこなった、と説明しているがめどはたっていない。
むつ市という場所の提示は、その後の展開をみても「みせ場所」でしかない。
マスコミなどでは敦賀市での誘致の動きも報道された。
大事なことは、県外でも県内にしても数百年以上の長期にわたり管理し続けなければならない使用ずみ核燃料を増やし続ける原子力発電を将来世代の負担を考えれば止めることではないか。
6,関西電力の信用は回復されたのか
・金品受領問題も自民議員の指摘にもあるようにまだくすぶっている。
・昨年8月に発生した大飯原発3号機の加圧器スプレー系配管のひびわれ問題では取り換えずに運転再開しようとしたが、規制委員会会合で安全性の証明ができず、結局配管を取り換えることに。不誠実な態度。
・私が全協で関電にただした美浜3号機の竜巻対策の安全工事の溶接不備の問題でもまだ不透明な部分が残る
・公正取引委員会からカルテル疑惑で調査
7,原子力規制の信頼性も揺らいでいる
少なくない会派議員からも指摘があったが、原子炉容器の脆性劣化についての評価のもととなる元データを確認せず、関西電力の評価結果だけで認可している
とくに、高浜1号機では脆性遷移温度が99℃と最も高く、美浜3号機でも57℃まで高くなっている。原子炉容器は交換できない。
現状の関電説明うのみのままでの規制審査では県民は信用できないことは明らかです。
県の原子力安全専門委員会でも「過酷事故はおこりうる、動かすべきではない」との意見に対し、鞍谷委員長は「そういう深いところの議論をしてこなかったことはまずかったかな、という気がする」などと述べました。また「安全性を確保」との表現にも「対策をしただけで安全というわけではない」などの異論が相次ぎました。
このような規制審査などの状況のままで老朽原発再稼働にすすむことは県民に誤った安全神話をふりまき、もしもの場合には県民の生命と財産を危険にさらすことになるのではありませんか。
最後に、3.11後に私たち福井県議会の特別委員会で福島視察調査に行きましたが。その際に、案内いただいた富岡町役場の課長さんが涙ながらに「私たちも原発との共生ということでやってきました。それがこの結果です。どうか福井の県会議員のみなさんよくみて帰ってください」と語られた、10年前のことを思い出します。
原発は大事故ならすべてが奪われます、福島では原発汚染水の海洋放出で、さらに数十年も苦しめられる異常がつづきます。
仮に大事故がなくても、使用済み核燃料は数百年、数千年単位であとの世代に大きな負担となります。
今回、抗議の断食に入られた小浜明通寺の中嶌哲演住職がたびたび口にされますが、あとからくるもののために、原発依存をつづける道からの転換を求めて討論といたします。
■発議第25号「40年超原発再稼働に関し丁寧かつ慎重な議論を求める決議案」には賛成いたします。
とくに県民のなかで不安が広がっている避難計画の実効性の課題と、安全対策を県原子力安全専門委員会として確認した内容についての県としての県民説明会開催の課題は、ほんらい40年超原発再稼働について知事が判断をしめす前におこなうべきです。
いま全国的にも県内でも新型コロナ感染症が猛威をふるっています。こうした最中に、特別の体制をとるとはいうものの、長期間停止していた40年超老朽原発3基もの再稼働をすすめるのは県民安全に対して無責任です。再稼働準備のためには県外からの労働者関係者の福井入りも予想されます。また、もし万が一、避難が必要な事態がおこれば、コロナ禍での県外避難は難しく、福島原発事故のように広域に放射能汚染が起これば県民はパニックです。
知事は「新しい知見なら原発止める」と言われましたが、いまはまさに新しい感染症蔓延の事態に直面しているわけですから、せめて再稼働は感染がおさまってから、ぐらいは最低限しめすのが当然ではないでしょうか。
このようなことすら県民の理解を得られないままの知事の再稼働同意がおこなわれるとすれば、県民の不安にこたえない県政とのそしりをまぬがれません。
最悪の時に最悪の判断をしてはなりません。
以上、申し上げて賛成討論といたします。
■発議第26号「エネルギー基本計画の見直し等に関する意見書案」について反対討論します。
この意見書案では、「新たなエネルギー基本計画において、原子力の位置づけを改めて明記し、安全性を最優先とした既設発電所の運転延長のみならず、新技術の開発等も含めた具体的なロードマップをしめす」よう求めています。また、核燃料サイクルの意義などについて国民理解をすすめるよう求めています。
これは
第一に、福島原発事故で崩壊した原発安全神話を復活させ、未来永劫原発にしがみつき、ふたたび福井をふくむ国内で原発の大事故をまねきかねない危険な道です。
事実、新聞報道にもあるように、自民党や電気事業連合会は、運転期間について経過年数ではなく、実際に稼働した年数でカウントするように求めています。まさに、60年運転の先のいわゆる80年運転まで狙ったものといわなくてはなりません。電力事業者の儲けのために老朽化した危険な原発を80年間稼働も想定しているのです。その第一歩が、日本ではじめての福井県での高浜1,2号機、美浜3号機の60年間延長運転にほかなりません。
既設原発の運転延長は新たな原発大事故への道であります。行き場のない使用済み核燃料を増やし続け、子々孫々にいたるまで大きな負担を押し付けるものです。
第二に、1兆円を超す税金投入にもかかわらず高速増殖炉もんじゅの失敗などによりすでに破綻した核燃料サイクル路線から、もんじゅの苦い失敗を経験した福井県民こそ、脱却しなくてはなりません。
プルサーマル発電の拡大は増大するプルトニウムの解決にはならず、原発労働者の被ばくを拡大するだけです。そもそも再処理のために原発の使用済み核燃料プールから運び出さなければ原発が停止に追い込まれ、再処理だけなら利用目的のないプルトニウムがたまりつづけるため、その場しのぎをしているにすぎません。
また核兵器をもたない国で50トンちかくものプルトニウムを保有しているのは日本だけで、国の安全にとっても由々しき事態です。
原子力規制委員会の田中俊一元委員長が「日本の原子力政策は嘘だらけでここまでやってきた。最大の問題はいまだに核燃料サイクルに拘泥していることだ」と喝破されていることを重く受け止めようではありませんか。
以上申し上げて反対討論といたします。