読売新聞・・・・<5>安全協定の権限拡大
恣意的運用への懸念も
2004年8月9日に関西電力美浜原発3号機(美浜町丹生)で起きた配管破損事故。運転開始から28年間も未点検だった2次冷却系配管が、水流による浸食と腐食ですり減り、破断した。噴出した高温の蒸気によって5人が死亡し、6人が重軽傷を負った。
県知事の西川一誠(65)は事故から3日後の12日、関電社長(当時、現相談役)の藤洋作(72)を県庁に呼び、「県内のあらゆる原発を止めて点検してほしい」と要請。関電側も応じざるを得なかった。翌13日、関電は「稼働中の原発8基を停止して点検する」と表明し、電力の需給状況をにらみながら順次、停止していった。国内で初めて、自治体の要請で原発が止まった例となった。
事故は、安全協定が大きく改定される契機にもなった。大事故が起きた際などには、自治体側は電力事業者へ原子炉停止要請【クリップ】ができるという項目が加わったのだ。
「これまでも必要な時は『止めろ』と言ってきたし、美浜3号機事故の際には実際に止めた。この機会に明文化した方がいいという話になった」。県原子力安全対策課参事として、事業者側と改定を協議した県原子力環境監視センター所長の寺川和良(59)が振り返る。
実はこの時、停止要請と対になる重要事項も追加された。事業者が停止要請に応じたり、国の事故調査委員会が設置されるような重大事故で停止したりした場合、運転再開にあたっては自治体側との事前協議が必要と明記されたのだ。
事故から9か月後の05年5月、県庁で行われた改定協定の調印式では、出席した藤が「この協定を順守し、安全運転を徹底したい」と繰り返し頭を下げた。安全協定が原発の停止や運転再開を左右し、まさに死命を制するほどの力を得た瞬間だった。
ただし改定事項では、停止要請の項目は詳細な規定があるのに、事前協議については、協議後に自治体がどのような条件や判断基準で運転再開を認めるのかという記述はない。安全上の基準は法令で定められても、住民の「安心」を協定上で定量化することは困難だ。それゆえ、恣意(しい)的な運用を懸念する声は当初から根強い。
事前協議は美浜3号機が最初の適用例となり、07年2月に営業運転を再開。2例目は今年5月、14年5か月ぶりに原子炉を再起動した日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(敦賀市白木)だった。だが、もんじゅの運転再開を巡っては、県が安全確保だけでなく、地域振興についても国との協議を要求し、実現させたことは記憶に新しい。
原発の安全協定に詳しい東京大客員教授の西脇由弘(57)は「運転再開の判断基準をすべて協定に書き込むのは、現実的ではない。個別の事例ごとに判断していくしかないだろう」としながら、「どのような条件であれば再開を認め、どのような手続きで協議を進めるのか。自治体側もそのつど明確に説明していくことが求められる」と指摘する。(敬称略)
【クリップ】原子炉停止要請 大事故発生時のほか、立ち入り調査結果や他原発で起きた事故の評価などから、県や原発立地市町が必要と判断した場合、事業者に対して原発の停止を要請できるとした安全協定の事項。読売新聞の調べでは、原発が立地する13道県のうち、福井県以外にも北海道と青森、茨城、新潟、愛媛、島根の5県が、類似事項を協定に盛り込んでいる。
(2010年8月28日 読売新聞)・・・・・・・・・・・・
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・・・・・・県知事の西川一誠(65)は事故から3日後の12日、関電社長(当時、現相談役)の藤洋作(72)を県庁に呼び、「県内のあらゆる原発を止めて点検してほしい」と要請。関電側も応じざるを得なかった。翌13日、関電は「稼働中の原発8基を停止して点検する」と表明し、電力の需給状況をにらみながら順次、停止していった。国内で初めて、自治体の要請で原発が止まった例となった。・・・・・・・・・
福井豪雨災害につづく、美浜原発での死傷事故。暑い夏を思いだした。
事故直後に開かれた福井県議会全員協議会で、私は「関西電力の安全管理の不備は明らか。関西電力のすべての原発の停止と総点検を求めよ」と主張した。
このような主張をしたのは、私ひとりで、当然のごとく出席していた部課長らは消極的だった。
しかしその後、記事にあるような知事の要請になった。
廊下であった私に、知事は「止めたでしょ」と語りかけた。私の提案を受け入れたのだ。
初めて自治体の要請で原発が止まった。
福井県の原発行政で「その時 歴史が動いた」ともいえる出来事だった。
議員というのは、長くじっくり考えて質問・提案することも多いが、重大事故などの時には、問題をすばやく見抜き、水平展開して指摘・提案することも必要な時がある。
当たり前だが、この提案は関西電力に巨額の損失をあたえた。その役割を果たせたのは、関西電力からの企業献金などの「腐れ縁」のない、県民の安全最優先の日本共産党の議員だからにほかならない。
恣意的運用への懸念も
2004年8月9日に関西電力美浜原発3号機(美浜町丹生)で起きた配管破損事故。運転開始から28年間も未点検だった2次冷却系配管が、水流による浸食と腐食ですり減り、破断した。噴出した高温の蒸気によって5人が死亡し、6人が重軽傷を負った。
県知事の西川一誠(65)は事故から3日後の12日、関電社長(当時、現相談役)の藤洋作(72)を県庁に呼び、「県内のあらゆる原発を止めて点検してほしい」と要請。関電側も応じざるを得なかった。翌13日、関電は「稼働中の原発8基を停止して点検する」と表明し、電力の需給状況をにらみながら順次、停止していった。国内で初めて、自治体の要請で原発が止まった例となった。
事故は、安全協定が大きく改定される契機にもなった。大事故が起きた際などには、自治体側は電力事業者へ原子炉停止要請【クリップ】ができるという項目が加わったのだ。
「これまでも必要な時は『止めろ』と言ってきたし、美浜3号機事故の際には実際に止めた。この機会に明文化した方がいいという話になった」。県原子力安全対策課参事として、事業者側と改定を協議した県原子力環境監視センター所長の寺川和良(59)が振り返る。
実はこの時、停止要請と対になる重要事項も追加された。事業者が停止要請に応じたり、国の事故調査委員会が設置されるような重大事故で停止したりした場合、運転再開にあたっては自治体側との事前協議が必要と明記されたのだ。
事故から9か月後の05年5月、県庁で行われた改定協定の調印式では、出席した藤が「この協定を順守し、安全運転を徹底したい」と繰り返し頭を下げた。安全協定が原発の停止や運転再開を左右し、まさに死命を制するほどの力を得た瞬間だった。
ただし改定事項では、停止要請の項目は詳細な規定があるのに、事前協議については、協議後に自治体がどのような条件や判断基準で運転再開を認めるのかという記述はない。安全上の基準は法令で定められても、住民の「安心」を協定上で定量化することは困難だ。それゆえ、恣意(しい)的な運用を懸念する声は当初から根強い。
事前協議は美浜3号機が最初の適用例となり、07年2月に営業運転を再開。2例目は今年5月、14年5か月ぶりに原子炉を再起動した日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(敦賀市白木)だった。だが、もんじゅの運転再開を巡っては、県が安全確保だけでなく、地域振興についても国との協議を要求し、実現させたことは記憶に新しい。
原発の安全協定に詳しい東京大客員教授の西脇由弘(57)は「運転再開の判断基準をすべて協定に書き込むのは、現実的ではない。個別の事例ごとに判断していくしかないだろう」としながら、「どのような条件であれば再開を認め、どのような手続きで協議を進めるのか。自治体側もそのつど明確に説明していくことが求められる」と指摘する。(敬称略)
【クリップ】原子炉停止要請 大事故発生時のほか、立ち入り調査結果や他原発で起きた事故の評価などから、県や原発立地市町が必要と判断した場合、事業者に対して原発の停止を要請できるとした安全協定の事項。読売新聞の調べでは、原発が立地する13道県のうち、福井県以外にも北海道と青森、茨城、新潟、愛媛、島根の5県が、類似事項を協定に盛り込んでいる。
(2010年8月28日 読売新聞)・・・・・・・・・・・・
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・・・・・・県知事の西川一誠(65)は事故から3日後の12日、関電社長(当時、現相談役)の藤洋作(72)を県庁に呼び、「県内のあらゆる原発を止めて点検してほしい」と要請。関電側も応じざるを得なかった。翌13日、関電は「稼働中の原発8基を停止して点検する」と表明し、電力の需給状況をにらみながら順次、停止していった。国内で初めて、自治体の要請で原発が止まった例となった。・・・・・・・・・
福井豪雨災害につづく、美浜原発での死傷事故。暑い夏を思いだした。
事故直後に開かれた福井県議会全員協議会で、私は「関西電力の安全管理の不備は明らか。関西電力のすべての原発の停止と総点検を求めよ」と主張した。
このような主張をしたのは、私ひとりで、当然のごとく出席していた部課長らは消極的だった。
しかしその後、記事にあるような知事の要請になった。
廊下であった私に、知事は「止めたでしょ」と語りかけた。私の提案を受け入れたのだ。
初めて自治体の要請で原発が止まった。
福井県の原発行政で「その時 歴史が動いた」ともいえる出来事だった。
議員というのは、長くじっくり考えて質問・提案することも多いが、重大事故などの時には、問題をすばやく見抜き、水平展開して指摘・提案することも必要な時がある。
当たり前だが、この提案は関西電力に巨額の損失をあたえた。その役割を果たせたのは、関西電力からの企業献金などの「腐れ縁」のない、県民の安全最優先の日本共産党の議員だからにほかならない。