ごまめ~の~いちょかみ・Ⅱ

趣味(落語と本)の話と大好きなうどんを中心に、ごまめになってもいちょかみで幅広くお届け

歌集 をみなへしをとこへし~塩野頼秀

2021-08-23 08:08:08 | 本の少し


☆☆☆

歌人としては、珍しくダンディさがにじむ歌。色気を忘れぬ男臭い匂いを漂わす初老。2018年に古希を迎えるとあるから、今年74歳。ほぼ私と同じ年代に、初老のあがきとも言うべき歌も多くて共感。

気に入った歌は・・・

書籍見てマネキンをみて女みて心残りの春の青山
年金と恋の欠片で食ひつなぐ いま海にゐて太陽が眩しい
信じられぬだらうがわれは禁欲的に生きてきて今それほどでない

追ひ越せるやうで追ひ越せぬゆつくりと最短線をゆく老いがゐる
ゆめ三分おもひで三分に暮らしをり残る四分が俎板のうへ
古希といふこのあやしかる轟きをサマースーツに包み歩めり
萌え初めしメタセコイヤの木漏れ日のほのかな青き隙きみを抱きたし
きみは君われは我なりと別れきて雄々しきや今宵下北沢は雪

逝きし友かぞふる夜に凝視する腹腔鏡の孔、癌出しし孔
術後半年検診にわが医師のいふ「もう人を愛してもいいですよ」
術後一年われ無事なれば行くすゑの闇か夜明けか知れぬ世にゐる

ビジネス街に昼餉を取れば早食ひを競へるわれのまだ在りをかし
「ああこいつ少しも立派になつてない」思はれてをりもう夏の雲
むかしよく宙とんでゐて止めたのは失敗だつた気がしてならぬ

スマホオフ状態にありわれはいま自己承認をできないでゐる
しもふりの肉ひとつつみ提げゆけり旧ぶる友と酌む年の酒
セロの音の人ごゑに似て修廣寺に秋の仏の赤くおはせり

まさに等身大の歌ばかりですな・・・。

 


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