ひとりでは生きられないのも芸のうち (文春文庫) | |
内田 樹 | |
文藝春秋 |
☆☆☆
さすが、今売れっ子の内田樹さんの本。
気軽に読めると思いきや、仕事にも通じる事柄に、電車の中でもしばしば
ひとつひとつの投げかけに本を閉じて考える・・・・・なかなか進めない。
世の中の普段あたりまえと思って過ごしている事柄を、論理的におかしいと諭してくれる。
私たちの社会のさまざまなシステムを機能不全に陥らせているのは、「ちゃんと仕事をしてくれる人がどこかにいるはずだ」という無根拠な楽観です。当事者意識のない人たちの制度改善努力は「文句をつけること」に限定される・・・と。なぜか、思い当たる耳の痛いまえがきで始まる。
労働については、今の若者への提言として、「労働は義務である。」と、現に、「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。」と憲法27条に明記してある。「とにかく、いいから黙って働け」というのが世の決まりなのだと、「条件が揃っていれば働いてもいい」という贅沢は許されないない。
なぜなら、人間は労働するのかということの意味は労働を通じてしか理解されないからだと。
現在、豊かな才能に恵まれた子どもは今もたくさん生まれている。
けれども、その才能を「みんなのために使う」ことのたいせつさは誰も教えない。「あなたの才能は、あなただけに利益をもたらすように排他的に使用しなさい」とこどもたちは教えられている。
だから、子供に向かって「他人のことはいいから、自分の利益だけ配慮しろ」と教えたのは、それまでの日本のような「お節介社会」にはまちがいなく有効な生存戦略だったが・・・。
その結果、親族制度の空洞化、終身雇用制の崩壊、未婚化、少子化などはすべてこの「お節介社会」の解体=自己決定・自己責任システムをめざした社会的趨勢でもある。
そこで考えられるのが、本の題である「ひとりでは生きられないのも芸のうち」である。自分にあった集団、そしてそれはどのような機能をもち、どれだけのサイズが適正なのかは、答えは述べられていない・・・これさえも自分で判断するしかない。
まだまだ、考える事柄は山ほど次から次に出てくるが、仕事にはじまり、結婚のこと、家族のこと、と普段の自分の考え、いきざまを、今一度整理するには最適の本・・・是非、時間と心の余裕のあるときに読まれることをお勧めします。
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