田口ランディさんが、初女先生との対談「深き森の語らい」の時に
読んだ詩が、「いのちのエール」におさめられていて、
その詩がとても響くというお便りが届いているので
、ここに載せたいと思います。
自分が 自分が
そう思って生きて来た
自分のことばかり考えて
自分の都合を押しつけて
何かをしてあげようと思い
してあげることに夢中になり
相手の話はよく聞かず
一を聴いて十を知った気になり
何かが上手くいかないと
外側に理由を探し
苦しいのは自分だけと感じ
持っているものの有難みを分かろうとをせず
ないものばかりの数を数えて
ああしよう こうしようと計算し
思い通りにならないと
腹を立てて苦しみ
苦しいことも全部人のせいにして
誰かが自分を幸せにしてくれると思い
叶わぬと嘆いて
手に入らぬものは あれはすっぱい葡萄だと言い
手に入れたものは たいしたものではないと満足出来ず
そういう自分をどうにかできると思い
自分ではないものに憧れ
自分が
自分がと
自分のことばかりしゃべってきた
自分のことばかり考えていると
だんだん苦しくなってどうしようもなくなって
心が破れそうになった
そんな時
初女さんは
そっと教えてくれました
言葉を超えてね
言葉を超えるってどういうことかなと思った
ずっと分からなかった
言葉はいつもここにある
私を満たしている
私は考えで一杯
でも初女さんの隣にいる時
しんとする
初女さんはとても静か
ああ、なんて静かで深いんだろう
深い森の中の湖のよう
ほんとうは静かになりたい
求めていたのは静けさなのに
心はいつも波だっている
この静けさに、触れたい
何も話さなくていい
ただじっと、この沈黙の中にいたい
沈黙の中にある 無音に耳を澄ます
こんなに豊かな静寂が
言葉と言葉の間に満ちている
すると、はるか遠くから
私を呼ぶ声がする
呼ばれた時
やっと私はここにいると気づいた
呼ばれている
空の果てから美しい鐘の音に
なんだ、私はあの音に
ずっと呼ばれていたんだ
田口 ランディ