世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

マルグリット・クノップフの肖像

2014-03-05 04:37:11 | 虹のコレクション・本館
No,84
フェルナン・クノップフ、「マルグリット・クノップフの肖像」、19世紀ベルギー、象徴主義。

象徴主義の画家は、人間の心の暗部と言うものに結構触れてくれるので、つい見てしまうね。

これは、女になりたい男の心が、あらわれている。モデルは画家の最愛の妹らしいが、画家はモデルから彼女自身を奪い、自分が彼女になってしまっている。

女であり、最愛の妹である、マルグリットに、彼はなりたかったのだ。

男には、こういう気持ちがあるね。女を愛するあまりに、愛する女そのものになってしまいたい。クノップフはそういう自分の気持ちを、絵に表現したわけだ。

彼は彼女を乱暴に犯すわけではない。殺してその肉体を奪うわけではない。象徴主義の表現の中で、魔法的に、自分とかのじょを重ね合わせ、絶妙なところで、かのじょを奪ったのだ。現実でやっては猟奇殺人になることを、架空の世界で欲求を満たしたのだともいえる。

彼女そのものに変身した自分と言うものが、どういうものであるかということを、この絵は教えている。美しいが、どこかさみしい。虚ろだ。いるように見えるが、絶対にいない。静寂の中に強烈な背徳がある。

マルグリットが目をそらしているのは、画家の本心に気づいているからだ。

芸術とはこういうこともできるものだ、ということだ。おもしろいね。




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする