世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

受胎告知のマリア

2014-03-07 03:44:38 | 虹のコレクション・本館
No,86
アントネッロ・ダ・メッシーナ、「受胎告知のマリア」、15世紀イタリア、初期ルネサンス。

これは美しいマリアだが、何とも硬い女性だね。顔以外はないようだ。肉体の香りがない。これは、恋をしようにもできない女性だ。
しかし男はこういう女性を描き続けている。聖母マリアのイメージは強烈だ。

男はマリアを追いかけ続けている。なぜ男は女を追いかけるのか。それは女が、すぐにいなくなるからだ。なぜいなくなるのか。それは男が、女におまえが必要だと言わないからだ。だから女はそれならと、すぐに離れて行く。

だが男はそうあっさりとあきらめられない。いつまでも未練をひく。そこであらゆる手段を使って女を捕まえようとする。時には暴力的にやる。殺す。挙句の果てに女を地獄の底に引きずり落として、汚いものにしてしまう。すると男は、汚くなってしまった女がいやで、マリアのような決して汚れない女を作り、それを追いかけるのだ。

堂々巡りだ。いつまでもいつまでも、男は、いもしない女のしりばかり追いかけている。そのために、あらゆる馬鹿なことをしてしまう。

もうわかるね。なぜこの世がこんなにも苦しくなってしまったのか。
男が、好きな女に、帰ってきてくれと言えなかったからだ。

ただそれだけのことだ。

汚れなき聖母マリアは、男の理想というより、悲哀そのものだよ。




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