世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

貝ねずみ

2014-03-08 08:42:53 | こものの部屋


      


主のない家が黒々と
田園をくいつぶしてゆく
あふれてくる虚無のためいきに
空気がさびついてゆく

いまこそわたしがゆかねば
いまこそわたしがゆかねば






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パキウス・プロクルス夫妻の肖像

2014-03-08 04:45:09 | 虹のコレクション・本館
No,87
不詳、「パキウス・プロクルス夫妻の肖像」、1世紀頃、イタリア、ポンペイ風俗画。

これはポンペイ遺跡からの出土品である。かわいらしいカップルだ。パキウス・プロクルスはパン屋であったらしい。作成年などはもちろん確定できないが、まだキリストの殺害を定かには知らなかった頃の絵だ。

人類にとって、イエス・キリストの殺害がどういう事件であったのかを思わせる。キリスト殺害以前は、人間はみなこのように、かなり単純な線をしていた。顔もかなり整っていた。思考の仕方も、単純だった。少々悪いことをしても、いつでも正義の門に帰れると、まだ信じていられたのである。

だが、キリスト殺害後、人間の思考は迷走を始める。あまりに大きな愛をあからさまに殺してしまった。それがゆえに、自分を少しでも正当化するために、複雑な論考を必要とした。それゆえに、学問や芸術が繊細に発達し始めた。人間の顔の線も微妙に歪み始め、陰が色濃く刻まれ始めた。

人類の複雑な思考能力は、キリストの殺害によって喚起されたのである。

今この絵を見ると、まるで子供に見えるだろう。何もわかってはいない。考えていることが単純に過ぎる。それはまだ、大きすぎる罪というものを、まだ人間が知らなかったからだ。

自分も神も許すことのできない、決定的な罪を犯してしまった。それはアベルの殺害よりもずっと重い。

人間はイエスを殺したことによって、大人への道を歩み始めたともいえる。




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