世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

バテシバ

2014-03-13 04:04:49 | 虹のコレクション・本館
No,92
セバスティアーノ・リッチ、「バテシバ」、18世紀イタリア、バロック、

バテシバをテーマにした絵を探した。レンブラントやメムリンクの絵が印象的だが、これを選んだ。実に美しいバテシバだね。ダヴィデがほれるわけだ。

説明するまでもないが一応説明しておくと、ユダヤの理想的王と言われるダヴィデはある日、水浴中のバテシバの姿をのぞき見て一目ぼれしてしまい、彼女の夫を戦地に送って死に追いやり、無理やり彼女を奪ったのである。ダヴィデの大きな汚点として伝えられている話だ。

理想的王というがね、これはどう考えても、馬鹿だよ。人として、最低だ。

バテシバの気持ちを考えてみたまえ。愛する夫を殺した男の元に行かねばならない。断れば殺される。女には、自分の気持ちなど言えない時代だったのだ。

女は金と力のある方になびくものだと、勝手に解釈してはならない。悲しみも苦しみも十分に味わっている。理不尽を感じながらも従わなければみなが困るとなれば、従う。そういう運命を、女性は背負わされてきたのだ。

男は、好きでもあきらめなければならない時はあきらめるという精神的訓練ができていない。わがままばかり言って周囲を苦しめる。結局は女が我慢するより仕方がない。

レンブラントのバテシバは悲しげで見るのが苦しい。我慢しなければならないことはわかっているが、どこで悲しみを逃せばいいのかわからない。そんな顔をしている。
耐えねばならないことを耐えていく日々に臨んでいく前に、悲しみに沈むことを自分に許している。そういう風に見える。

その点このバテシバは、まだ自分の運命を知らない。美しいバテシバを見ているダヴィデの気持ちにもなるね。だが、手を出してはいけないよ。

かのじょの幸せを考えてあげたまえ。




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