世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

ポルト・リガトの聖母

2014-03-28 03:43:44 | 虹のコレクション・本館
No,105
サルヴァドール・ダリ、「ポルト・リガトの聖母」、20世紀スペイン、シュルレアリスム。

これはシュルレアリスムの到達点だ。崩壊よりも酷いものが描かれている。

決して美しく描いてはいけない女性を、至高の聖母にしている。産むことなどない女性に子供を与えている。

この絵のモデルのガラは、ダリの妻でありマネージャーであり、支配者だった。彼女はダリにささやいた。
「あなたは天才よ」
だがそれは本当はこういう意味だった。おまえはわたしの阿呆だ。わたしのために何でもするんだよ。

ダリはガラのために絵を描く。それを売った金でガラのために何でもする。ガラは宝石を欲しがる。毛皮を、家を、車を欲しがる。ダリはガラの欲しいものは何でも買ってやる。ガラがいいからさ。自分は天才だって言ってくれる。だれよりもおれを認めてくれる。

だが、本当の理由はほかにある。楽だからさ。
ガラに支配されていると、楽なんだ。
言うことをきいてさえいれば、うまくいく。

だが、愛して尽くした女の中を覗いてみると、そこには鉄のような虚無がある。
何もない。誰もいない。

だれだったのだ、あれは。どこに行ったのだ、ガラは。

あれほど苦労してかせいだ金は、どこに行った。

恐ろしい女なのさ。ガラは。




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