ケセン川では罠の漁が主流だったが、オロソ沼では釣竿を使っての釣りがよくやられていた。沼には蛙のほかにも、いい魚が泳いでいたのだ。銀色で肉厚の太った魚だ。少し泥臭いが、香草と一緒に煮て食べればうまい。子供を孕んでいる女が食べるといいとも言われていた。
サリクは自分の釣竿を出し、その手入れを始めた。釣竿は三本あった。ネオには小さいのを貸すことにした。
「釣竿の作り方も覚えなきゃいけないけどな。まずは釣りの仕方を覚えよう。茅糸は丈夫なのを選ぶんだ。見分け方も教えてやる」
ネオはサリクの話を熱心に聞いた。釣竿に糸を結ぶときの結び方も、今まで見たこともない結び方だった。それを覚えるのに、何回も練習した。
「よし、いけるぞ。これくらい頑丈に結べたらいける。で、こいつが釣り針な。魚の骨で作ってあるんだ。ジタカがこれを作っているんだよ。こいつを、さっきと同じ方法で、糸の片方に結び付ける。本番はこの針に、餌をつけるんだ」
「餌って何?」
「川の方に虫がいるから、それをつかまえて使うんだ。だが、蛙の足でもいい。おれはよく蛙を食うから、干した足を持ってる。それを使おう」
ネオはサリクに張り付くようにして、釣竿の手入れを習った。目が輝いていた。仕事を覚えるのがすごく楽しいのだ。
「よし、釣竿の準備はできたから、明日オロソ沼に行ってみよう。いいのが釣れたら、モラにやったらいい。腹の子供がよく育つ」
「うん!」