アシメックは驚いた。こんなに早く来るとは思っていなかったのだ。セムドは言った。
「ユカダのところの、コルというんだ。四歳だ。一応、会わせてみようと思ってつれてきた」
コルは四歳にしては小さめの子供だった。子供なら普通夏は丸裸だが、小さい腰布をつけている。時々神経の細い子供がいて、見えるのを恥ずかしがると、親が茅布で腰布をつくってやることがあるのは、アシメックも知っていた。
コルは大きな目で、不安そうにアシメックを見上げていた。今にも涙が出て来そうな目だ。母親に言われたものの、つらいのだろう。アシメックはしばし何も言えず、コルを見つめた。
沈黙が流れた。コルの表情がくもりはじめた頃、アシメックは意を決してコルに近寄り、膝を折って、やさしく声をかけた。
「おれのことは知ってるか」
「うん」とコルは言った。
「すぐに来なくてもいいんだぞ。おまえが嫌なら、嫌と言っていい」
するとコルは、大きく声を飲み込んで、涙をぽろぽろ流した。ものわかりのいい子供なのだ。幼いながら、母親が子だくさんで苦労しているのを、知っているのだ。
「かあちゃんが、アシメックのところは、いいぞって」
「言ったのか」
「うん。米、たくさん食えるって」
「ああ、たびたび食わせてやるよ」
「かあちゃんのところでは、めったに食えないからって」
そういうと、コルは、大きな声を上げて泣き出した。アシメックはたまらなくなった。抱きしめてやりたいが、子供が怖がるといけない。
「だいじにしてやる。ソミナもやさしいぞ。おまえがいいっていうなら、おれんとこに来い」
そう言ってやるのが、精一杯だった。