世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

夏⑦

2018-01-09 04:12:51 | 風紋


みんなが作った器は、しばらく天日で乾かされた後、火で焼き上げられる。広場に榾や草を積み、その中に器を並べて、火を点けられた。火は高々と上がる。一日中燃やさねばならない。子供がおもしろがって近づこうとするのを、大人が何度も妨げねばならなかった。

シクルという男がそれを担当していた。彼は土器を焼く火の具合がよくわかったのだ。榾を補充するタイミングや、土器の焼けあがりを見極めるのに長けていた。何事にも、うまいやつというのはいる。アシメックはシクルの後ろに立ち、しばらく黙って彼の仕事を眺めていた

シクルはずっと炎を見つめている。榾が炎で曲がるのや、ぱきぱきと音を立てて割れるのを、じっと見ている。アシメックは邪魔してはならないことを知っている。シクルはこういう、火と榾の具合を見るのが好きなのだ。どんなふうに燃えれば、どれだけ熱いかということが、何となくわかる。そのわかるということが、おもしろいのだ。

榾の山が燃えて小さくなってくると、シクルはそばにいる若いものに命じて、榾を加えさせた。また火が上がる。するとシクルは小さくのどの奥で何かを言っている。

いいぞ、と言っているのが聞こえる。おもしろいやつだ。アシメックは、こういうやつを眺めているのが、おもしろいのだ。

一日中火のそばにいても、こいつはあきないんだ。アシメックはシクルの背中を見ながら、笑った。いいやつというのはいいもんだ。なんでもしてやりたくなる。

アシメックがそう思いながら火を見上げた時、後ろから誰かが声をかけてきた。ふりむくと、セムドが小さな子供の手をひいて、立っていた。




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