こんなに短い間に、こんなにたくさん子供ができるとは思わなかったのだ。ユカダはよく男にもてたので、何となく受け入れていたらこうなってしまった。男が助けてくれたらいいが、父親というものは、だいたい子供には興味を持たないものなのだ。
セムドがユカダを訪ねたのは、そんな時だった。川辺に座って子供たちを見ているユカダに、セムドは後ろからそっと声をかけた。
「やあ、大変だな」
セムドは人の苦労がわかるやつだから、人が気持ちいいと思う言葉を言ってやれる。そう言われたユカダは涙が出そうな気持になって、セムドを振り向いた。
「大変なのよ。赤ん坊がむずかってばかりで。上の子もまだ小さいし。どうにかならないかしら」
ユカダは正直に言った。我慢も限界に来ようとしていたのだ。
セムドはそんなユカダの顔を見ながら、少しの間当たり障りのない話をし、機を見計らって、話を持ち掛けてみた。
「アシメックのところのソミナが?」
「うん、ソミナじゃなくて、アシメックが欲しがっているんだ。男の子がいいそうだ」
ユカダは黙った。そして川で遊んでいる自分の子供たちを見た。確かに、ひとりへれば楽になる。しかしいざ離そうと思うと、心が詰まった。できるなら全部自分で育ててやりたい。だが、このままでは、みんながだめになるかもしれないのだ。