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世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

夏⑤

2018-01-07 04:12:37 | 風紋


こんなに短い間に、こんなにたくさん子供ができるとは思わなかったのだ。ユカダはよく男にもてたので、何となく受け入れていたらこうなってしまった。男が助けてくれたらいいが、父親というものは、だいたい子供には興味を持たないものなのだ。

セムドがユカダを訪ねたのは、そんな時だった。川辺に座って子供たちを見ているユカダに、セムドは後ろからそっと声をかけた。

「やあ、大変だな」
セムドは人の苦労がわかるやつだから、人が気持ちいいと思う言葉を言ってやれる。そう言われたユカダは涙が出そうな気持になって、セムドを振り向いた。

「大変なのよ。赤ん坊がむずかってばかりで。上の子もまだ小さいし。どうにかならないかしら」
ユカダは正直に言った。我慢も限界に来ようとしていたのだ。

セムドはそんなユカダの顔を見ながら、少しの間当たり障りのない話をし、機を見計らって、話を持ち掛けてみた。

「アシメックのところのソミナが?」
「うん、ソミナじゃなくて、アシメックが欲しがっているんだ。男の子がいいそうだ」

ユカダは黙った。そして川で遊んでいる自分の子供たちを見た。確かに、ひとりへれば楽になる。しかしいざ離そうと思うと、心が詰まった。できるなら全部自分で育ててやりたい。だが、このままでは、みんながだめになるかもしれないのだ。




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