次の日はもちろん、ネオは朝早くからサリクの家に押しかけた。そしてサリクをせかすようにして、オロソ沼に出掛けた。サリクはそんなネオをかわいいと思いつつ、ネオの後について行った。
「いい場所があるんだ。沼の岸には危ないところがあるから足元に気をつけろ。だいたい釣りをするときは、ここから釣るんだよ」
サリクはオロソ沼の岸で、大きな岩が沼に突き出しているところにネオを連れて行った。
「ここから? 稲が茂っててあまり水が見えないけど」
「こういうとこに、魚が隠れてるんだよ。いいか、見てろよ」
サリクは岩の上に座ると、手早く釣り針に蛙の足を引っかけ、それを沼に落とし込んだ。
「こうやって、魚がかかるまで待つんだ。何、それほど時間はかからない。ここは穴場なんだよ。絶対かかる」
サリクの言うとおりだった。魚は案外簡単にかかった。釣竿はすぐにしなり、手ごたえを感じたサリクは一気に魚を引き上げた。
銀色の大きな魚が水から出てきたのを見て、ネオは歓声をあげた。
「ほんとだ。すごいや」
「ようし、こんどはおまえがやってみろ」
サリクは立ち上がり、ネオを岩の上に座らせた。ネオは見様見真似で針に蛙の足を差し、それを水に落とし込んだ。しばらく待った。
空の上で太陽が移動していくのが、水面に映っていた。ネオは息を凝らして、釣り糸を見ていた。
しばらくして、ぐんと、手ごたえがあった。
「それいまだ!」
ネオはうわあと言いつつ、反射的に竿を引き上げた。魚は案外強かった。一、二度、竿をとられそうになったところを、後ろからサリクが支えてくれた。