世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

夏②

2018-01-04 04:12:41 | 風紋


村での夏の仕事は、土器を作ることだった。土をこねて器をつくり、火で焼き上げるのだ。土器はいくらでも必要だったから、労働力の余る夏は、村のほとんどの大人がこれに従事した。もちろんアシメックもやった。

ケセン川の上流の方に、いい土が露出している崖があり、そこから土をとってきてこねるのだ。うまいやつはあっという間に見事な壺を作っていく。皿や鉢も作る。米を煮るための壺は、大きさも形も決まっていた。

トカムも従事していたが、なかなかみなのようにうまくできなかった。不器用なやつというのはいるのだ。壺を作ろうとしても、途中で形が崩れてくるので、彼はセムドに指導されながら、皿ばかり作っていた。微妙に形が歪んでいるが、皿ならなんとかなるのだ。

セムドはいつもトカムのことを気にかけていた。なんとかしてやらねば、オラブのようになってしまう。それはどうしても避けたかった。

セムドはケセン川の崖で土をとりながら、トカムのことばかり考えた。昨日もいっしょに皿つくりをしたが、あまりかまうとトカムも嫌がるのだ。だからしばらく離れて見ていることにしているのだが、不器用なトカムの仕事を見ていると、心配になってならない。




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする