村での夏の仕事は、土器を作ることだった。土をこねて器をつくり、火で焼き上げるのだ。土器はいくらでも必要だったから、労働力の余る夏は、村のほとんどの大人がこれに従事した。もちろんアシメックもやった。
ケセン川の上流の方に、いい土が露出している崖があり、そこから土をとってきてこねるのだ。うまいやつはあっという間に見事な壺を作っていく。皿や鉢も作る。米を煮るための壺は、大きさも形も決まっていた。
トカムも従事していたが、なかなかみなのようにうまくできなかった。不器用なやつというのはいるのだ。壺を作ろうとしても、途中で形が崩れてくるので、彼はセムドに指導されながら、皿ばかり作っていた。微妙に形が歪んでいるが、皿ならなんとかなるのだ。
セムドはいつもトカムのことを気にかけていた。なんとかしてやらねば、オラブのようになってしまう。それはどうしても避けたかった。
セムドはケセン川の崖で土をとりながら、トカムのことばかり考えた。昨日もいっしょに皿つくりをしたが、あまりかまうとトカムも嫌がるのだ。だからしばらく離れて見ていることにしているのだが、不器用なトカムの仕事を見ていると、心配になってならない。