村には平和な日々が過ぎていった。印象的なことと言えば、続けて弔いが二件あったことだけだ。年よりの男が二人死んだのだ。別に病気にかかっていたわけではなく、朝になるといつの間にか冷たくなっていた。そういう死に方はよくあった。
「魂がアルカラを思い出したんだろう」とミコルはいい、弔いを導いた。みな遺体を丁寧に茅布で包み、穴を掘って埋めてやった。花を供え、涙で別れを惜しんだ。だが悲しみはすぐに薄れていく。去年死んだハルトのことなどは、もうみんなすっかり忘れていた。
新しく生まれてきた子供の名前を覚えることのほうが、忙しかった。エマナの子のアシムも順調に育っていった。新しくアシメックの家に入ったコルも、ソミナになつき、愛くるしい笑顔を見せるようになっていた。
ネオにも変化が訪れていた。彼はある日サリクの家を訪ね、サリクが弓の手入れをしているところを見ながら、ぽつりと言った。
「狩人組に入るには、どうしたらいいの?」
するとサリクは笑いながら言った。
「まだ早いぞ。おまえまだ十二だろう。十七くらいにならないと、シュコックに見てもらえないよ」
「サリクはいつ狩人組に入ったの?」
「十六の時だ。おれは早かったんだよ。そんときの狩人組の頭はシュコックじゃなかったけど」
「どうやって入れたの?」
「うん? おれは体が大きめだったから、やってみないかと言われたんだ。それから弓の作り方習って、いろいろみんなに教えてもらった」
それを聞くと、ネオはため息をついた。
「いろいろ習わなくっちゃ、狩人なんてやれないよな」