テヅルカ以外に神がいるなどと考えるだけでも、アロンダはぞっとした。子供のころから知っているテヅルカの神以上に、すばらしい神がほかにいるなんて、思えなかった。いや、思いたくなどなかった。
でも、あの男は、テヅルカの子供ではないのだ。
背丈はゴリンゴより大きく、美しいが、顔には変な赤い土を塗っている。肩は張ってたくましいが、その姿の特徴は明らかにヤルスベ族と違っていた。
ヤルスベ族には、あんなに腕が長い男はいない。
アロンダは鋭い目でそれを見ていた。
ヤルスベ族はカシワナ族に比べると、若干小さいのだ。
何であんな人間たちがいるのだろう? なんで、ヤルスベ族と違う人間がいるのだろう? なんで彼らは、わたしたちと違うのか。
アロンダはそれをシロマゴに聞いてみたかった。だが、聞けば妙な顔をされるような気がして、言えなかった。シロマゴは今、ヤルスベ族の最初の男と女が産んだ子供が、ミタイト川で大魚と闘う話をしている。
その子供は、川で銀色の山のような大魚と出会い、石をぶつけてそれを殺したのだ。そうするとその中からひとりの女が出て来て、その子供はその女と結婚し、また子供が生まれたという。