「調子はどうだい?」
ネオはモラのお腹のあたりを見ながら行った。まだ見た限り、目立つほど膨らんでいない。
「うん、今のところ順調よ。生まれるのは次の春だって」
「生むのって、痛いんだろ?」
「うん、そうみたい」
ネオは息をのみこんだ。そして目を曇らせながら、言った。
「なんか、ごめんな」
「何言ってるの」
モラはおかしそうに笑った。
「きっと大丈夫よ。あたし、去年はクストと組んだの。そのときも子供ができたんだけど、三月で流れちゃった。すごくお腹が痛かった。でも何でもなかったよ」
それを聞くと、ネオは黙り込んだ。さっと目が暗くなり、唇を固く結んだ。そしてしばらくすると、声を強くして、言った。
「おれ、モラがほかの男と組むの、いやだ」
モラは驚いた。ネオは続けた。
「今度も、おれと組んでよ」
「いいけど。どうしたの」
「その次も、おれと組んでよ」
「ネオったら」
このころの風習では、合意であれば男も女も好きな相手と交渉していいことになっていたが、時に特定の相手にこだわる者もいた。どうしてもその男、その女でなければ嫌だという者もいたのだ。ネオはそれであるらしかった。モラはびっくりしたが、そういうことを男に言われたら、断ってもいけないことは、母親から習っていた。
だから、あまりよく考えず、すぐに笑って、「別にいいよ」と言った。
「来年もその次も、ネオと組むわ」
「ほんと? ずっと?」
「うん、ずっと」
モラが笑ってくれたので、ネオは内心飛び上がるほど喜んだ。持っている茅袋が震えるほどだった。