読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

黒川博行『二度のお別れ』

2018年05月13日 | 読書

◇『二度のお別れ』 著者: 黒川 博行 2017.10 角川書店 刊(角川文庫)

  
 
  本の題名を見て思わずチャンドラーの名作『長いお別れ』を連想してしまった。同作とは全く
 関係はない。
  黒川博行作品『雨に殺せば』、『八号古墳に消えた』と黒豆コンビ登場のシリーズ最初の作品。
  このころ(1979.1)悲惨な三菱銀行人質事件があった。ヒントになったのだろうか。
  作中事件は、黒田刑事が自嘲気味につぶやいた、偉い人の戒名のような「三協銀行強盗誘拐殺
 人事件」。1億円の身代金をただ盗りされ、人質は殺され、犯人も特定できず迷宮入りとなった。
 大阪府警捜査1課の無能ぶりをあざ笑うような作品であるが、そこは捜査陣の若手チーム、黒豆
 コンビ(黒田憲造刑事とマメちゃんこと亀田淳也刑事)の軽妙にして洒脱な関西弁のやり取りが
 リアル感をもって捜査の空転ぶりの虚しさを埋めてくれる。

  本書の事件はと言えば、新大阪駅近くのある銀行支店にピストルを持った男が押し入って現金
 400万円を奪う。ところが店内の客の一人が犯人に立ち向かい銃撃され、人質として囚われてし
 まう。犯人は人質とともに車で逃走する。男は400万円では足りないと1億円の身代金を要求して
 きた。誘拐事件で最も重要な身代金授受をめぐって巧妙な方法の指示と警察との攻防が展開され
 るが、見事犯人の方が勝ちを納める。

  犯人は3年後に意外な形で明らかになるが、マメちゃんがかつて指摘した疑念が的を得ていた
 ことが明らかになり黒田は悔しがる。

  題名の『二度の別れ』の由来は終幕段階で明らかになる。

                                 (以上この項終わり)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする