◇『死んだ山田と教室』
著者:金子 玲介 2024.5 講談社 刊
とにかく亡くなった人の音声 だけが教室のスピーカーに憑依するという着想が
すばらしい。
不動高校(男子校)2年E組の山田君が夏休み中交通事故で死んだ。
告別式明けのホ―ムルームで担任の花輪先生が「この際席替えするか」と
言ったところ、 突然山田君の声だけが教室のスピーカーを通じて流れ「席替え
山田案」を提案する。それがきっかけでクラスの人気者だった山田と声だけで
も今までどおりバカ話をして楽しもうと、呼び出し用合言葉も作った。
彼らのバカ話は男子校でもあり当然当世・今様の若者言葉が縦横無尽に飛び
交い、臨場感満点である。
でもバカ話もいつまでもは続かない。卒業式が終わり1年経ち3年経つと元2
年E組の教室を訪ねる人も少なくなった。なにせ皆歳をとって大きくなっている
のに、山田だけは死んだ時のままだから。
ただ中2からの親友和久津だけは大学に入り大学院を終えた時も時間を作り山田
と語り合った。山田と交流を続けるために不動高の教師採用試験を受けたくらい』
だから。
或る夜和久津は珍しく山田から深刻な申し出でを受ける。昔の 2Eの仲間も
このところ誰も来ない「さびしい。孤独感が耐え難い」、「もう消えたい。殺
してくれ」というのである。必死で生き続けることをすすめた和久津もついにス
ピーカーの配線切断に同意するのだが...。
死んだ生徒の魂だけ教室のスピーカーに憑依するという、摩訶不思議な現象を当世の
ビビッドな若者言葉 で綴る稀有な作品に脱帽。
(以上この項終わり)
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