読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

C.J.ボックス 『フリーファイア』

2020年01月21日 | 読書


◇『フリーファイア』(原題:FREE FIRE)


   著者:C.J.ボックス(C.J.BOX)

      訳者:野口 百合子    2013.6講談社(講談社文庫)

   


 猟区管理官ジョーピケットシリーズ第1作は『沈黙の森』。その後『凍れる森』、
『神の獲物』、『震える山』、『裁きの荒野』、『狼の領域』が邦訳されている。
 テーマは絶滅危惧種の保護、反政府主義者の暗躍、資源開発にからむ不正・汚職
などであるが、本作はシリーズ第7弾でテーマは資源開発に絡む不正である。

 本作も
内容的にはこっこうサスペンスにも満ちていて、3件・6人の殺人事件を伴
うが、
舞台がほぼ一貫して自然豊かなイエローストーン国立公園の、しかも有名な
オールドフェイスフル間欠泉周辺である。イエローストーン公園の丁寧な自然描写
と地質構造学的な説明が楽しい。また、殺人事件の動機も、事件関係者、捜査関係
者もこの間欠泉に収斂されて
いく流れになっており、かつて読んだ『沈黙の森』、
『狼の領域』と同様、自然公園において独特な役割
を担う狩猟管理官という法執行
官としての活躍と舞台背景が興味の中心となる。

   イエローストーン国立公園は米国で初めて自然公園の管理が法制化された公園で
ある(1972年)。
 日本の鹿児島県の面積に匹敵する9千平方キロの広がりを有し、アイダホ、モ
ンタナ、ワイオミングの4州にまたがる。エルクやバッファローなど野生動物が生
息している。中でもスティームボート・ガイザー間欠泉は熱水が100mも吹き上が
る、世界最大規模の間欠泉である。
 また周辺のサンバースト・ガイザー地域には地ガスが噴出している(フリーフ
ァイアー)。

 主人公のジョー・ピケットはある事件で職を解かれ、義父の牧場で牧童頭をやっ
ていたが、州知事に呼び出され、イエローストーン国立公園で起きた殺人事件の再
調査を頼まれる。3人の若者を殺した犯人の弁護士クレイ・マッキャンは、公園法
の抜け穴を使い釈放されていた。

 ジョーが事件の隠された背景を探るうちに殺人被害者であるパークレンジャーの
上司カーターが何者かに殺害される。間欠泉地域に噴出するフリーファイアー中の
好熱性細菌が、石炭層のガス化などバイオプロスペクティング力を持つことが確認
され、某大企業が事業化に暗躍していることを知る。
 ネイティブ・インディアンの親友ネイトや女性パークレンジャーのデミングの協
力を得ながら悪徳グループを追い詰める。
 終段のスピード感あふれる活劇場面がなかなかスリリングである。

 ジョーは猟区管理官復帰によって、子供の頃親しんだイエローストーン国立公園
妻メアリーベスと二人の娘シェリダンとルーシーを連れていくことができた。

して根深い確執があった父ジョージとの再会があった。今回はの家族にまつわ
るエピソードは少ない。

                         (以上この項終わり)

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