読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

浅田次郎の『一路』<上>

2023年10月11日 | 読書

◇『一路』<上>

   著者:浅田 次郎   2015.4 中央公論新社 刊

     

  これは時代小説。本の表題「一路」とは主人公の名前である。
 小野寺一路は父親が亡くなって急遽江戸から郷里美濃の田名部に呼ばれた。跡継ぎ
 なので、仕えている知行7500石の旗本蒔坂左京大夫の御供頭の役目を継ぐためであ
 る。父は失火が因で亡くなっているので本来ならばお家断絶でもおかしくないとこ
 ろ、参勤交代の期日が迫っているため急遽一路に御供頭として差配を任せることと
 したのである。江戸までの12日間の参勤道中である。

  ところが一路は父親からは道中御供頭としての何たるか、その作法などまるで教
 わっていなかった。
  そこでこの本の作者浅田次郎の出番である。人情話はお手のもの、一路を助ける
 数多の人々が登場する。父の友人勘定役国分七左衛門、代々の御供頭添役の栗山真
 吾、武士道に忠実な佐久間勘十郎、檀那寺の住職空澄、八幡宮の神官、旅の易者朧
 庵、髪結いの新三などの支えを受けながら一路は役目を貫徹するのである。 

  焼け跡から小野寺家代々の「蒔坂左京大夫様行軍心得」が見つかった。一路はこ
 の際古式の軍列に倣い参勤交代を仕切る決心する。これまでの50人体制から80人体
 制へ、費用の倍はかかる。
 その百両は父の友人勘定役国分七左衛門が認めてくれた。

  南美濃から江戸までは長い。中山道六十九次は大半が山の中。しかも和田峠を初
 め、木曾の桟、碓氷峠、など難所が多い。ましてやこの道中には殿様左京太夫を廃
 し自ら田名部の殿様になろうという殿様後見役蒔坂将監と側用人も供に加わってい
 る。剣呑この上ない。
        難所のひとつ木曽の桟は越えたものの、厳冬の和田峠には鬼が棲む。延期を勧め
 られながら行軍に敢然と挑んだ御供頭らはどうなるのか。
  
 上巻はここまで。

 <作品構成>
 其の一 御発駕まで
 其の弐 左京大夫様御発籠
 其の参 木曽路跋渉
 其の四 神の里鬼の栖

                              (以上この項終わり)

 

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