◇ ジョー・ゴアズのハードボイルド 『Glass Tiger』
『硝子の暗殺者』(原題:Glass Tiger)著者:Joe Gores 訳者:坂本憲一 2011.6 扶桑社刊
2006年に本書を著した作者ジョー・ゴアズは、2011.1亡くなった。享年79。種々の職業を転々と
した。12年にわたって私立探偵をやったこともある。
本書は長編ミステリーとされるが、吾輩はむしろ活劇ものとして楽しんだ。
大統領の暗殺ものは結構多いが、本書も元CIAのスナイパー(狙撃手)だったブレンダン・ソーンが
隠棲したアフリカから密猟容疑で強引にアメリカに連れ戻され、現職大統領を付け狙う狙撃犯を見つ
け出し始末するよう命ぜられる。この犯人と目されるハルデン・コーウィンも元ヴェトナム従軍の狙撃
の名手。妻子を酒酔い運転で轢き逃げされ亡くしているという似た境遇をもつ。
大統領側近(首席補佐官、FBI特別捜査官など)の権力亡者たちは、大統領暗殺の背景も良く知
らないままコーウィンを追いかけ、ソーンをこき使うのだが、取り巻きどもの不可解な動きに気付いた
ソーンが背景を探っていくと意外な事実が浮かび上がってくる。実は大統領には隠さなければならな
いいまわしい過去があった。
似た過去を持つ二人のスナイパーはほとんど不死身の身体を持つ。死んだと思っていても実は生
き延びている。結構スリリングな展開であり、単なるハードボイルドではなく活劇ものであるとみた。
ミステリーでもあるので肝心なところは差し控えるが、結局大統領は狙撃されなかった。生き延び
た二人の狙撃手が巡り会い、語り合う。ソーンは再び懐かしのアフリカに戻る。事件で知り合った
ジャネットというアメリカネイティブの女性と共に。
ところで話は変わるが、最近外国の本を読むときは、舞台となっている土地をGoogle Earthで
開いて探す。本書のようにワシントンDCのほか、カリフォルニアや中西部が舞台になっていても、
道路や地形が手に取るように現れて臨場感が数倍高まる。これまではLAで手に入れた全米道路
地図を探しながら現れる土地を想像していたが、グーグルさんのおかげで読書が一段と楽しくなっ
た。
(以上この項終わり)
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