◇『裏切り』(原題:SVEK)
著者:カーリン・アルヴテーゲン(KARIN ALVTEGEN)
訳者:柳沢由美子 2006.9 小学館 刊 (小学館文庫)
「きみといても、もう楽しくない」
この一言が悲劇の始まりだった。
家計の中心である妻エーヴァ35歳、生活の全てを妻に依存する夫ヘンリック。妻
に負い目を感じる夫は不倫に走る。
夫の不倫相手が息子の通う保育園の保育士リンダだと知った妻は激怒し二人に復
讐を誓う。
夫の不倫で頭にきたエーヴァはパブで知り合った若者と初めての情事に走る。こ
の若者ヨーナスにとっても初めての体験で自分好みの彼女に夢中になる。
互いに一度だけの情事であったがヨーナスは彼女の名前と住所を探しだす。ヨー
ナスはかつて片思いの女性を水死させようとした過去のあ るパラノイア(偏執症)
だった。
エーヴァはリンダに致命的打撃を与えるべく保育園に侵入、リンダのパソコンか
ら園児の男性保護者宛に熱烈なラブレターを送り(原文はリンダからヘンリック
に宛てたレター)リンダを窮地に陥れる。
初めての情事の相手に夢中になった男は彼女の住所を突き止め夫婦間が離婚の危
機にあることを知りエーヴァをわがものにする策を練る。
パラノイアに魅 入られたエーヴァは蜘蛛の巣に囚われた蝶のごとく破滅の水底に
沈んで行く。
この本のストーリーの展開は主としてこの3人の心理状態を緻密にかつ交互に追
うスタイルであるが、 信頼関係を失った夫婦の疑惑と不信、混乱と期待、絶望と攻
撃など感情の動き、パラノイアの偏執的な感情の動きと行動が克明に描写されると
ころが特長である。
(以上この項終わり)
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