◇ 只今皇居東御苑の紅葉状況は
機会があって東京に出て、皇居東御苑を歩いてきました。
例年この辺りでは11月下旬が紅葉の盛りと聞いていました。やはり11月初旬ではまだまだ
紅葉は無理なようです。
ついでに東京駅前のイチョウ並木、日比谷公園の紅葉などもチェックしてきました。やはり早
すぎます。
しばらく足が遠のいていた銀座7丁目のライオン・ビアホールに寄り遅い昼食をとりました。中
ジョッキを2杯飲みましたが、ビールは相変わらず結構なお味でした。
大手町から竹橋を望む
竹橋から気象庁・日経ビル方向を望む
天主台から松の廊下後方向を望む
二の丸庭園 絵を描いている人がちらほら…
二の丸庭園・諏訪の茶屋
和田倉噴水公園
東京駅前のイチョウ並木
日比谷公園・野外音楽堂から日比谷公会堂方向を
日比谷公園噴水前
(以上この項終わり)
◇ 『バッド・カントリー』(原題:Bad Country)
著者:C・B・マッケンジー(CBMcKenzie)
訳者:熊谷 千寿 2016.8 早川書房 (ハヤカワ・ミステリー文庫)
この作品は、アメリカ南西部を舞台にしたミステリーの最優秀処女長編作品に贈
られるトニー・ヒラーマン賞を受賞した。
アリゾナ州ツーソンの近くロスハロス郡に住む私立探偵ロデオ・グレース・ガー
ネットが休暇旅行から帰ると、自宅の敷地前でアメリカ先住民の男が殺されていた。
これが物語の発端である。
作者マッケンジーの叙述は一種独特なものがあり、ちょっとジェームズ・エルロ
イの語り口に似ていなくもない。饒舌ではない。しかしやや偏執なところがあり、
被害者の部屋に残されていたコンサート・チケットを延々1ページ半使って列挙す
る。ほとんど本筋に寄与しないのに。
ロデオはアメリカ先住民(アメリカインディアン)の血が半分混じっている。仕
事もアメリカ南西部、しかもロスハロス郡にとどまっているようだ。これまでお目
にかかった私立探偵では異色である。生まれ育ったところなので依頼された殺人事
件を調べまわっても、ほとんどが知り合い。都合の良いこともあるが悪い時もある。
実はロデオの敷地前で殺された先住民のほかに、都合6件の殺人事件が短期間に
起こっている。ロスハロス郡保安官まで殺された。インディアン居留地警察の警官
も怪しいし、かつての恋人で保安官の娘サイリーナも怪しい(「酔っているときも
危ねえが、素面の時はもっと危ねえ」女)。橋の袂で殺された少年サムエルの兄ロ
ナルドからは「3日以内の犯人を見つけないとお前の命はない」などと脅されたり
する。
とにかく関係者が多く、話も混み入っていて、最後にロデオが全体像を読み解い
てくれるまでなかなか理解できないのだが、アリゾナ州ツーソン近くの小さな郡の
砂漠の田舎町の、裕福な白人と貧困にあえぐ先住民と、メキシコ系アメリカ人の確
執が産み出した異様な事件と、荒涼とした砂漠の地理的情景が魅力である。
☆荒涼としているのに美しい作品(NYタイムズ・ブックレビュー)
☆ロデオ競技者上がりの私立探偵を主人公に据えるこの土埃にまみれたノワール
小説は、コーマック・マッカーシーに比肩されるという栄誉を早くも勝ち取っ
た。 (エスクァイア)
第二作『Burn What Will Burn』は2016.6 出版とのこと。
(以上この項終わり)
◇ 『猿の見る夢』 著者:桐野 夏生 2016.8 講談社 刊
図書館では数百人のリクエストがあって、やっと順番が回って来た。
そもそも週刊現代で2013.8.10号から2014.9.6号まで連載された作品で、この度
単行本として刊行、再アピールされた。
「これまでで一番愛おしい男を書いた」と著者ご本人が発言している。彼女が愛お
しく感じるのはこういう種類の男かと、勝手にがっかりしたが、「…現代社会を照射
する桐野文学の新たな代表作」と大げさに言わなくても、現代風俗の一断面を種々採
り入れて、面白おかしく仕立てているところはさすがと言わねばならない。
主人公の薄井正明(59歳)は元大手銀行員で、OLIVEという女性衣料品製造・小売
の会社の会長織場に請われて経理担当取締役の地位にある。史代という妻と2人の息子
がいる。
常務取締役になれば65歳まで安泰なので何とか常務になりたい、あわよくば無能(と
薄井は思っている)の社長(織場会長の女婿)が失脚すれば社長になれるという期待も
ある。しかし冒険もしないし、目立つこともしない、要領良く過ごすのが処世術と心得
ている。ただ自分の心の弱さに苦々しさも感じているという弱気な一面もある。
同じ銀行の出身で現在はNET関連の会社に勤めている田村美優樹(46歳)と大人の
付き合いをしている。すでに10年近い付き合いである。
月3万円を渡しているが、愛人として囲っているというわけでもない。彼女のマン
ションに時々通って食事をして、ビールを飲むそしてSEXを楽しんで大抵2時間で帰る。
決して泊まらない。妻には仕事で遅くなったと言っているから。
携帯のメールで美優樹をなだめる時には「みゆたん」などと呼ぶ。まるで中学生のよ
うなやり取りを躊躇なく出来るところが薄井のキャラクターなのだ。(桐野夏生が愛お
しく感じる男の一面?)
薄井は「自分は女がいないとダメな男だ」という自覚がある(p437)だけに会長秘
書の朝川真奈(38歳)にも気があって、何とか関係を持ちたいとチャンスを狙っている。
バツイチであるがやや豊満な体形で美優樹にはない魅力がある。
この朝川もしたたかな女で、社長がセクハラの常習者であることへの怒りから、ネッ
トに会社のセクハラ事件をバラし社長の失脚を図ったりする。間に立って事件の収拾を図
った薄井は好機到来とばかりに朝川に関係を迫るがあっさりと、しかし断固として断られ
る。
妻の史代がゴルフ仲間の縁で長峰栄子という怪しげな預言者(65歳)と付き合い始め、
薄井家に寄生するようになった。この長峰のせいでいろんなことが複雑に回転し始める。
そんな中、認知症の母が亡くなった。妻が母や妹と不仲であったせいもあって見舞にも
行かなかった薄井は、遺産を全て妹に残すという母の遺言書を盗みだすことまでやる。
葬儀に乗り込んできた「みゆたん」に薄井は仰天する。妻は怒り離婚するという。美優
樹は結婚はごめんだという。家を出された薄井はウィークリーマンションを借り、独り暮
らしに。
頭を抱えた薄井の野望はどうなるのか。自業自得といえばそうだが。
こうした類の小説の展開はおおよそ想像がつくが、なんと終章が呆気なく、すべからく
中途半端で消化不良である。
やっかみ半分でいえば、たとえ3万とはいえ、月々小遣いの中から女性に囲い込み料を
払えるサラリーマンはそうはいないのではないだろうか。一部上場の会社役員という主人
公の環境設定は都合が良い。ケチで、自分勝手で、優柔不断で、スケベで…こういう軽佻
浮薄な男って案外多いかもしれないが、作者が面白おかしくするために書いた設定なの
で、自分をそんな立場においてみたらとか考えながら読むとまた面白い。
薄井とみゆたんは普通のセックスフレンドの関係になったようだが、得体の知れない預
言者長峰の行方はしれず尻切れトンボ。織場会長が癌で経営意欲を失い、社長のスキ
ャンダルもあって大手スーパーのTOBに応じてOLIEVEは消滅。社長どころか常務昇進
も夢と消えた。「史代に離婚を翻意してもらうしかない」と思ったがどうなったのか解ら
ない。
週刊誌の契約期間があって、しっかりと終章をまとめることができなかったのかもしれ
ないが、単行本にする機会に加筆して欲しかった。
猿の見た夢という題名の由来は?作中予知夢預言者長峰が講釈しているように、本来
「論語」では見ざる、聞かざる、言わざるの三猿ではなく「せ猿」の入った四猿が正解。
礼なきことをしてはいけない。姦淫に対する欲望を戒めているのだというが、さて、夢を
見た猿は薄井を指すのか? 取ってつけたような題名、ちょっと無理があるのではないだ
ろうか。わざわざ長峰に無用な真面目な講釈までさせて。
(以上この項終わり)
◇ 季節の花―Ⅲ
今回のテーマは季節の花。季節は秋なので女郎花とかコスモスとか秋明菊とか
いろいろ選択肢はあるが、たまたま幹事が手当てした花は秋の花としてはあまり
ピンとこないバラや変種のカーネーションになった。花瓶がちょっと変わっていて
面白かった。
白い花は陰影で質感を出すしかないが、表現に腐心する。
背景色はバラやカーネーションの赤系の色を混ぜた方がよかったのかもしれな
いが、無難に緑系(ビリジャン+コンポーズブルー)にした。
Artenon F6
(以上この項終わり)