◇『絶対悲観主義』
著者:楠木 建 2022.6 講談社 刊 (講談社+α新書)
題名に惹かれて読んだ。
著者が言う悲観主義は普通言われる楽観主義に相対する概念としての
悲観主義とはとらえ方がちょっと違うかもしれない。
我々個人の仕事に対するスタンスを初め日常的な言動を主導する規範と
して、悲観的姿勢の採用を勧めている本である。例示や譬えが具体的で面
白い。
著者は自分なりの論理で物事は基本的に悲観的立場で対処した方が良い
結果を招くという考え方を勧めているのである。
「困難に直面してもやり抜く力(GRIT)無用、逆境から回復する力不要
これが絶対悲観主義の 構えです」と著者は言う。
世の中に自分の思い通りになる事なんかほとんどない。こうした真実を
直視さえしておけば、戦争や病気のようなよほどのことがない限り困難も
逆境もない。
「うまくいかないだろうな」と構えていて「ま、ちょとやってみるか…」
これが絶対悲観主義の思考と行動だと言うのである。
事の前に悲観的に構えて期待のツマミを思いっきり悲観方向に回して置
くと万が一うまくいくとすごくうれしい。大体は失敗するけど心安らかに
敗北を受け入れられる。
面白いのは絶対悲観主義者は人に褒められても真に受けない。謙虚なの
ではなく自分の能力を信用していないから。でもそういう評価を複数の人
から繰り返し受けてると悲観の壁を突き破って、ようやく楽観が入ってく
る。たまに成功することがあり、これが続継すると自信が持てるようにな
り好循環を生み出すということ。悲観原理の行動が対極の楽観事象を生む
と言うのである。
なお以下13章にわたり派生的なテーマで著者の考えをエッセイ的に述べ、
特に第8章のホラーの条件は具体的に個人名を挙げた標本陳列型で納得する。
また第9章のなりふり構わずの「なり」と「ふり」第12章の痺れる名言も面
白い。
第2章幸福の条件
第3章健康と平和
第4章お金と時間
第5章自己認識
第6章チーム力
第7章友達
第8章オーラの正体
第9章「なり」と 「ふり」
第10章リモートワーク
第11章失敗
第12章痺れる名言
第13章発表
第14章初老の老後
(以上この項終わり)