◇『黒幕は闇に沈む』(上)(原題:AN ABSENCE OF LIGHT)
著者:デイヴィッド・L・リンジー(David L.Lindsey)
訳者:山本 光伸 1998.3 新潮社 刊 (新潮文庫)
アメリカの警察小説。
著者はテキサス州ヒューストン警察の事務職に就いて執筆活動を行っており、
警官の連帯意識、権力争い、上司の権威主義など警察組織の描写にリアル感が
ある。多分日本の警察組織にはないと思うが、ヒューストン市警の刑事部に犯
罪情報課という組織があって、犯罪を未然に防ぐために日頃からいろんな組織、
個人からあらゆる情報を集め、犯罪の動向を分析し殺人課や強盗課などに引き
継ぐ。
本作の主人公マーカス・グレーバー警部は犯罪情報課の中枢として課内を仕
切っているが、妻のドーレーとの間に双子の息子をもうけたものの、二人が成
人し結婚したあたりから妻との間に亀裂が生じ、妻は男と駆け落ちしてしまっ
た。今は男やもめの寂しさを託っている。
突然捜査官の一人アーサー・ティスラーが死んだ。自殺か事故死、他殺か。
今手掛けている案件と係わりがあるのかどうか。パートナーとして動いていた
ディーン・バーテルは関連を否定する。
しかしグレーバーはバーテルの表情に不審な感じを受け配下のポーラとケイ
シーにティスラーとバーテルを徹底歴に調べるよう指示する。
ところが今度は犯罪情報課組織犯罪班の班長ビーザムが釣りの最中に心臓発
作で死んだ。他殺も疑われる。ビーザムも絡んでいたのか。グレーバーも上司
のウェストレイトも事態の深刻さに動揺する。
元政府機関諜報部員のアーネットが創設した調査会社に依頼し見張りを付け
ていたバーテルが監視の 目をくぐり年配の男と会っていた。
実はバーテルはパノス・カラティスという謎の男から多額の報酬を餌に、な
にやら大掛かりな犯罪計画の片棒を担わされていた。しかしカラティスはグレ
ーバーの捜査手腕に密かに恐れていた。
(以上この項終わり)