毎年 コシヒカリの新米が届いてしばらくすると渋柿が届く。
1~2週間すると橙色だった渋柿も赤みを増してくる。
それと共に硬かった実が柔らかくなる。
不思議に何処へ行くのか渋味が消えて
代わりに甘味がドンドン増してくる。
知り合いの吉野の柿農家の人は言う
「柔らかく熟し切った柿を喰らうのは本当の柿の美味しさを知らない都会モン」
上等の柿は堅くても甘くて、採れたての旨い柿を知っているのは俺達「里モン」
だと言わんばかり。
でもね、夏の間に陽の恵みを一杯浴びて渋味もたっぷり溜めた柿が
収穫されて遠く揺られながら運ばれて、風に晒されギュッと引き締まって
渋味が取れて表情が崩れて角が取れたとき
薄くなった皮を捲るのも形が崩れるほどになった時
もう笑顔でないと食べては失礼なくらいに微笑みがこぼれる。
手も口の周りもジュクジュクになってベタベタ。
それでもとても幸せな気分にさせてくれる。
おいしい。
こんな風に熟せるのだろうかと 自らの自信の無さに気付いた時
種の舌触りが我に戻してくれた。