
核兵器禁止条約発効を祝う集い〜藤森俊希さん講演

20210124 核兵器禁止条約発効を祝う集い〜社民党長野県連合中川博司長野県議会議員スピーチ
<以下全文>
1月22日核兵器禁止条約が発効し、核兵器廃絶に向けた世界の動きがスタートすることを、本日お集りの皆さんと共に確認しあいたいと思います。
藤森さんのスピーチは、これまでに何度か聞いてきましたが、今日のスピーチは希望を感じました。
10月24日、50か国目のホンジェラスが署名をした翌日ピースボートが行った12時間テレビを見ました。最初に登場したのが、ブラジル被爆者平和協会の96才の森田さんなど3人で、50か国目の批准を喜んでいました。そのブラジル被爆者平和協会は、昨年暮れに高齢化を理由として解散をしたというニュースが流れました。
12時間テレビの最後に登場したのが長崎で核廃絶に向けた活動をしている学生の皆さんでした。
希望は、核廃絶の運動が若者に引き継がれていることです。
私自身は、労働組合の青年部の活動で「反核平和の火リレー」に参加したことが、核兵器廃絶に向けた運動の入り口でした。被爆地広島で始まった「反核平和の火リレーが、長野県で始まったのは1988年のことです。核兵器の廃絶に向けて、長野県内の自治体に「非核平和自治体宣言」を行うよう要請するため、広島市平和公園で採火した「平和の灯」をトーチとしてリレーを行う運動です。当時県内の自治体は県・市町村含めて124ありましたが、のべ6,000人のランナーが1600キロを5週間かけて走り継ぐ運動です。ただ走るだけではなく、被爆の実相を学び、「語り継ごう走り継ごうヒロシマ・ナガサキの心を」スローガンにし、学習会を行ってきました。33回目となった昨年は、コロナの影響でランナーが集まって走ることはできませんでしたが、自治体への要請は県を含めて全78自治体へ行いました。私たちが語り継いできたヒロシマ・ナガサキの心とは、「人間の尊厳を奪うものは、誰であろうとも、どんな理由があろうとも許さないことだ。そして、そのために行動を起こすこと」です。
昨年の8月6日、原水禁の総会で、藤森さんのスピーチと共に、被爆者の一人である今井和子さんのお話を聞きました。今井さんは「被爆証言を続けてきたが、今の世界の動きに無力感を感じる」と語り始めました。ある日テレビを見ていたら、アメリカの若者の70%が核兵器に反対しているという世論調査の結果を聞き驚きました。その若者の一人が被爆者の証言を聞いて「人種差別・地球温暖化・核兵器が人間の尊厳を奪うもので同じだ」と語ったのです。今井さんは、それを聞いて「勇気をいただいた」と語りました。
また、核兵器禁止条約が発効した22日の夜、社民党福島みずほ党首とカクワカの皆さんや高校生平和大使の皆さんとのトークセッションがありました。カクワカとは「核政策を知りたい広島若者有権者の会」の略で、主に国会議員の皆さんに核兵器の廃絶について考えを聞く活動をしています。カクワカの一人の方は「条約発効で社会が変わっていくのに、日本の国会は議論していないことに危機感を持っている。関心が無い人が多い中でどう政治や市民に関わっていくのか」と語り、まずは知ってもらうために「すすめ核兵器禁止条約プロジェクト」に取り組んでいるというお話をしてくれました。
高校生平和大使は1998年から始まり、今年で第23代目となります。毎年選ばれた高校生平和大使は、高校生1万人署名を携えて軍縮会議が開かれるスイス・ジュネーブの国連欧州本部を訪問し核兵器廃絶と平和な世界の実現を訴えています。今年の平和大使の高校生は核兵器禁止条約の発効について「市民社会の長きにわたっての訴えが届いた結果だと思います。過去に、ニューヨークテロ事件の時にはもう辞めようかと思ったことがあったそうですが、やり続けてきたことが力になったと思う。その時に、生まれた言葉が“私たちは、微力ではあるが無力ではない”という言葉です」と話してくれました。
これまでに話があったように唯一の戦争被爆国である日本の政府は、「核兵器保有国との橋渡し役となる」という理由で、核兵器禁止条約交渉会議にも参加してきませんでした。核兵器禁止条約は締約国でなければ拘束されませんが、ICANのベアトリス・フィン事務局長は「発効により(核軍縮を進めるべきだという)強い国際規範が生まれ、核保有国も圧力にさらされる」と指摘しています。日本や北大西洋条約機構(NATO)加盟国など「核の傘」に依存する国が参加することが「最初のステップになる」と話しています。
さらに、条約が発効する意味は「核兵器は違法である」という国際規範は、例え条約に加盟していなくても強い抑制力を働かせることになります。地雷禁止条約やクラスター爆弾禁止条約は、アメリカなどが参加していませんが、使うことは無くなりました。核兵器は使えば地球が終わることは誰もが理解しています。使わない、使えない核兵器ならば、廃絶することがどんなにか平和に向かう力になることか分かりません。
話は変わりますが、最近話題の「人新生資本論」を読まれた方はいらっしゃいますか?大阪市立大学の准教授である斎藤幸平さんが書かれた本です。主に気候変動について、マルクスはどう考えようとしていたのか、その手掛かりをマルクス晩年の研究の対象となった自然科学書物の「抜き書き」に求めて研究された本です。
21世紀の最大の課題である気候変動について、「マルクスは見解を示していない」という批判があります。マルクスやエンゲルスが無制約的な経済・技術成長を盲目的に賛美しており、自然資源の枯渇や生態系の破壊といった環境問題について気にもとめていない」と言われ続けてきました。これに対して斎藤さんは「マルクスの経済学批判の真の狙いはエコロジーという視点を入れることなしには、正しく理解することができない」との研究を発表しています。さらに「資本主義における惑星の普遍的物質代謝の亀裂を批判し、持続可能な未来社会―『エコ社会主義』を構想するための方法論的基礎を与えてくれる」と述べています。近代において、人間が自然と切り離されたことが、資本主義を形作るもとになっていることや、あるいは人間もまた自然の一部であり、人間労働は休息抜きにはありえない限界性を持っていることは誰でも理解できるところですが、マルクスの晩年の自然科学の研究から「最終的には、資本は自然的世界の諸制約から自由になることはできないのであり、その矛盾が―経済危機ではなく―環境危機として現れてくるのである」と捉えています。資本主義を超える社会を、これまでの全体主義的な社会主義ではなく、「民主的な環境社会主義」「草の根社会主義」の実現へのシステムチェンジを訴えています。
「核の危機」も、この社会のシステムをチェンジしなければ実現できない課題の一つかもしれません。成長と利益の増大を求め続けることが資本主義社会の宿命だとしたら、原発を含めた核開発をやめることはできないだろうし、成長を目指した資本による自然破壊を止めることはできません。資本の成長は自らを「豊か」にすることで、可視化されない(あるいは無視され続ける)発展途上国の資源や森林の収奪を行い続けます。賃金格差の増大、非正規労働の拡大を止めることができなければ、福祉・医療の切り捨ても止めることはできないでしょう。核廃絶もできないのかもしれません。
次の時代を担う世代をZ世代といいます。Z世代は確実に次の新しい社会を想像しています。グレタ・トゥーンベリさんはZ世代の代表です。彼女は私たちに向かって気候変動に具体的な行動を起こすよう呼び掛けています。「大絶滅を前にしているというのに、あなたたちはお金のことと、経済発展がいつまでも続くというおとぎ話ばかり」と訴えたのはニューヨーク国連本部で開催された2019年気候サミットでした。
私はこうした若者たちの声や行動に強く自分自身反省をします。私は強大なアメリカという国やロシアという国や中国という国は、「何を言っても変わらないだろう」と思ってしまっています。「核兵器はなくならないだろう」と、あきらめてしまう気持ちも正直あります。ですが、私にも3人の子どもがいます。この子どもたちの未来をあきらめることができるのかと反問します。せめて何かできることはないのかと考えます。
「核兵器(むろん、兵器全般)を製造する会社や支援する会社への投資をやめよう!」と呼びかけることはできます。
「核兵器禁止条約を批准する政府をつくろう!」と働きかけることはできます。
幸いに、昨日信州市民アクションと県内3野党がWebで会議を持ちました。立憲民主党からは篠原孝県連代表が参加しました。日本共産党からは藤野保史衆議院議員が参加しました。社民党からは私が参加しました。
羽田雄一郎参議院議員が新型コロナで亡くなられたことを受けて行われる参議院補欠選挙と衆議院選挙に向けた課題について話し合われました。皆さんと一緒に、市民と野党の統一候補として推しだした杉尾さんも参議院内閣委員会で涙ながらに訴えておりました。野党が検査を拡大してくれとどれほど言ってきたことか、すぐに検査を受けていれば、その結果すぐに入院していれば、落とさなくてよかった命です。昨日までに日本全体で5063人の方が亡くなっています。入院先が見つからず自宅療養のまま亡くなった人が全国で17人います。5063人という数字や17人亡くなったという数字ではありません。無くなっている方一人ひとりに家族がいます。一人ひとりに日々の暮らしがあったのです。
新型コロナで奪われる命、核兵器で奪われる命、一つ一つの命はすべて重いものです。今こそ、命と暮らしを守る政治の実現が求められています。
信州市民アクションが私たち野党に示した共通政策に「核兵器禁止条約を批准します」と書かれています。このことは中央でも確認できることです。政権交代が実現すれば、新しい日本政府は核兵器禁止条約を批准するのです。
カクワカの学生が「核なき世界の未来図を共有しよう」と呼びかけていました。そうです、核兵器廃絶は夢物語ではありません。今日ここにお集りの皆さんと共に、日本政府が核兵器禁止条約を批准し、そして核兵器が廃絶される平和へ向かう世界の未来を共有しようではありませんか。
ありがとうございました。