2 人権問題について
(1)迷惑行為等防止条例の改正について
【中川】差別を伴う悪質な「嫌がらせ行為」が10年以上にわたって反復して行われるような重大な人権にかかわる事件が、最近地元紙で3日間にわたり特集が組まれていました。その内容から現行の法体系では行政も警察もなかなか対応しきれない現状が伺えます。
長野県以外の都道府県では、いわゆる迷惑防止条例で「嫌がらせ行為」を規制していますが、長野県においても悪質な嫌がらせ行為については、処罰を含め規制すべきではないかと考えます。
2月定例会で、花岡県議からの質問に答えて、警察本部長から、迷惑防止条例の改正の必要性や改正のあり方について真剣に検討していく旨の答弁もありましたが、いわゆる迷惑防止条例について、「嫌がらせ行為の禁止」等を追加する改正に向けての作業を急ぐべきと考えますが警察本部長の見解を伺います。
【警察本部長】迷惑防止条例についてご質問をいただいた。
前回の2月長野県議会定例会において、私から答弁させていただいたとおり、現在、県警察では、いわゆる迷惑防止条例の改正について、真剣に検討を進めているところである。
その中において、「公共の場所又は乗物」以外の場所における盗撮やのぞき行為等の規制を検討しているほか、議員ご指摘の、人間関係のトラブル等に起因する嫌がらせ行為や恋愛感情に基づかないつきまとい等を規制対象に加えることなどについても併せて検討しているところである。
県警察としましては、できる限り早く条例改正の案をまとめ、関係機関等との協議を経て、議会に提出できるようどりょくしてまいる。
(2)ハンセン病患者台帳流出について
【中川】明治時代に警察が県内のハンセン病患者らの氏名などをまとめたとみられる台帳がインターネット上のオークションに出品されるという事案が、今年2月に起こりました。これはハンセン病回復者の皆さんやその家族の皆さんに、多大な不安と恐怖をもたらし続けるという精神的被害の現実から、早急な問題解決が図られなければならない課題です。
今回の問題は、長野県だけの問題ではなく明治32年の調査は隔離政策の開始につながる全国一斉調査であり、同様の資料が全国的に存在し、同じように流出してもおかしくない状態であることから国としても早急に対策を講じる必要があります。また、人権侵害を起こす可能性が高い歴史的文書、公文書に対する扱いについても国の段階での法整備が必要だと思われます。
ただ、今回の長野県の文書の流出ということですから、長野県として人権問題やハンセン病問題にどう取り組んでいくのかということが問われています。
そこで、まず警察本部長に、この件に関する県警察の対応状況について伺います。
【警察本部長】本件については、本年2月17日、県から表紙に大町警察署との記載があるハンセン病患者に係る台帳がネットオークションやネットショップに出品されているとの情報提供があり、県警察として認知したものである。
当該文書の表紙には大町警察署との記載がありますが、文書が作成されたと思料される明治時代は、中央では内務省、地方では県知事によって、警察が管理運営されており、現在の大町警察署とは組織が異なること、また、昭和23年に、衛生に関する業務が警察から県に移管されていることなどから、当該文書が出品された経緯の調査等については、県が調査主体となり、県警察としても保管文書の調査等を行うなど県の調査に必要な協力しているところである。
なお、本件を受け、県警察では本年2月に22警察署を含む県警察の全所属につき同種文書が存在していないか調査を実施し、本年6月にも県からの「ハンセン病に係る文書の保管状況等調査」を受け、再度調査を行い、この種の保健衛生に関する文書は保管していないことを確認している。
今回の文書の流出の経緯は明らかではありませんが、いずれにせよ、このような文書が行政機関から流出することはあってはならないことであると認識している。
県警察としては、引き続き、行政文書の整理・保管や保存期間が満了した文書の廃棄等を適切に行い、文書管理を徹底してまいる。
【中川】次に、今回の事案を把握してからの経緯と今後の対応について県民文化部長に伺います。
【県民文化部長】本年2月の事案把握後、人権侵害に繋がる恐れがあることから、直ちに人権救済機関である長野地方法務局へ報告するとともに、厚生労働省とも情報共有を行いました。また、オークション出品者を訪問し、台帳を販売しないように依頼したところであります。
また、先月にはハンセン病市民学会等で構成された『「明治三十二年癩病患者並血統家系調べ」に関する検討会』の皆さんから、県としての取組姿勢を明確にし、対策を講じるよう、要請をいただき、県として今回の文書への対応を行うとともに、行政の情報管理の在り方の再検討や、人権意識の向上に取り組んでいくことを回答いたしました。
現在、ハンセン病に係る公文書の有無や、保管状況について、現地機関を含めた全庁を対象に調査中であり、来月には結果を取りまとめてまいります。
また、総務部等において、個人情報を含む行政の情報管理を適切に行うよう通知の発出や情報統括責任者会議等での徹底を行ったところであり、今後、個人情報が漏洩した場合の対処手順の見直しについても行っていく予定です。
さらに、県職員の意識向上を図るべく、研修会の開催を検討しております。
引き続き、国や関係団体の皆様とも情報共有をしながら、必要な取組みを行ってまいります。
【中川】そして、ハンセン病患者台帳流出に関する知事の認識をお伺いします。あわせて、人権は県民の安心な生活の基盤であると考えますが、県行政のトップとしてこれまでも知事は人権を守ることについて様々発信をしてきていますが、あらためて人権を守ることについての知事の決意をお伺いします。
【知事】今回、おそらく元は県で保管していたであろう文書によりまして、ハンセン病回復者及びご家族の皆様に多大な不安を与えてしまっていることについて、重く受け止めているところであります。
こうしたことが、二度と起こらないように、関係団体の皆さまのご意見も十分承りながら、県としてしっかり対応をしていきたいという風に考えています。
関係の皆さんと意見交換させていただいた際に私から、今部長からも答弁ありましたように、大きく3点、課題を申し上げています。1つは今回の文書の扱いであります。こうした文書がまた同じ形で出てしまうのではないか、またどこかに存在するのではないかという風な心配をされていらっしゃるので、我々としてはできるだけ県庁内をしっかりと調査してきたいと思っています。同じような文書があるのか、ないのか、確認を行っていきたいと思います。
また、これは関係の皆さま方と相談の上ではありますが、県民の皆さま方の中に、こういった文書を保有されている方が、もしいらっしゃれば申し出て頂くというような呼びかけも検討していきたいと思っています。
また、2点目として一般的に今回、個人情報が含まれている文書でありますので、行政としての情報管理をしっかり行っていかなければいけないという風に考えています。県として改めて情報管理を徹底すると同時に、問題が生じた場合の対応についても、処理方針を明確にして臨んでいきたいという風に考えています。
それから3点目が、人権を守るための取組の強化ということでございます。これが中川先生のご質問にも、重なる部分がありますけども、今、コロナ禍の中でも誹謗中傷・差別が大きな問題になっています。今まさに人権の問題に、我々長野県としても改めて、正面から向き合って対策を強化していきたいという風に考えています。職員の人権意識を更に向上させるための、研修等を行っていきたいと思いますし、県民の皆さま方と人権について共に考える場を設けていくことを考えていきたいと思っています。加えて今年度中には、人権政策推進基本方針の改定をして、今日的な課題も含めて県としての対応の在り方を考えていきたいという風に思っています。こうした人権の課題に県として、真摯に、真剣に向き合う中で人権が尊重される長野県を目指して取り組んでいきたいと考えております。以上です。
【中川】そもそも、癩予防法の廃止に伴う名簿の廃棄について国から指示があったのか、廃棄されたという事実を確認する仕組みがあったのか、古書店がどのような経緯で入手したのか、県は当初回収を躊躇したと報道されているがその事実関係を明らかにするとともに、今後の調査のあり方についても、県・市町村関係機関への調査とともに、県職員・警察官関係者のOBへの聞き取り調査、古書店・古文書などを扱う業者、さらには個人への呼びかけなど責任体制を明確にして調査が行われるようお願いします。