A24 労働条件や雇用にとって有害としか言えません
労働については、第19章「労働」が設けられました。政府は、この章が「労働条件悪化の歯止めになる」と説明していますが、それは期待できません。TPPは貿易障壁をなくし、自由化・規制緩和を推進するため、働く人の労働条件や権利は後退します。労働の章も、グローバル企業がますます国境を超えて自由に展開することを保障する内容になっています。
第19章「労働」には、ILO(国際労働機関)の98年新宣言が引用されていますが、「結社の自由」、「強制労働禁止」、「差別待遇の禁止」、「児童労働の禁止」という最低限守るべき国際労働基準の基本が、ILO条約よりも弱くなる可能性があります。例えば強制労働については、「強制労働に関与した産品を輸入しないよう奨励する」としかありません。しかも日本は、「強制労働の廃止」、「差別待遇の禁止」に関するILO条約2つ(105号、111号)を批准していません。
また日本では、TPPの先取りともいえるような派遣法の改正、解雇規制の緩和、残業代の撤廃、外国人労働者・研修生の受け入れの規制緩和など労働法制の改悪が進んでいることにも警戒が必要です。
TPPによって確実に利益が増えるのは、ごく一部の自動車、IT家電、インフラ系企業と商社であり、地域経済は「原則無関税化」によって長期にわたり打撃を受けます。TPPというグローバル経済の原理は、日本から海外への投資を増やします。壊されるのは農業だけではありません。原料を生産して運び、加工し、販売するという国内、地域のサプライチェーンが壊されれば、地域経済全般に影響が及び、失業者が増えることになります。TPPは日本の雇用にとって有害だという声を上げねばなりません(布施恵輔)