2、2050ゼロカーボンについて
[中川(博)議員の質問]
次に、2050ゼロカーボンについて伺います。
2050年ゼロカーボンを実現するためには、この10年が勝負だと言われています。そのためにも、私たちは何をしなければならないのでしょうか。新型コロナへの対応で重要なことは、危機感の共有だったと思います。気候変動への対応もいかに危機感を世界中の人々が、そして私たちが共有できるのかということが一つのポイントだと思います。
二つ目のポイントは、1人1人の市民や企業がどう自分の問題として考え、行動を起こすことができるのかということです。新型コロナで言えば、行動変容です。
一つの試みとして、くじ引き民主主義という制度があります。ヨーロッパから始まり、直近では札幌市が取り組みましたが、くじ引きで選ばれた市民がどうしたらCO2の排出を削減できるのか議論し、行政に提言を行うという取組です。
帝国データバンクの調査では、県内企業は、2050年カーボンニュートラル達成について、「達成可能」が15.8%、「困難」が47%、「できない」が15.4%と台頭している現状もあります。
気候変動対策として、企業の生産のあり方や県民の暮らし方など、これまで通りではないシステムチェンジが求められていると考えますが、地球温暖化対策に向けて、県民意識の醸成をどのように図っていくのか、阿部知事にお伺いします。
[阿部知事の答弁]
地球温暖化対策に関する県民意識の醸成をどう図るのかというご質問であります。
地球温暖化の話は、非常に長期的であり、グローバルであり、なかなか自分事としにくい側面もあります。ただ、今待ったなしで取組が必要になっておりますし、また、県民の皆様お一人お一人の身近な取組が、中川議員がおっしゃるとおりゼロカーボンの実現に向けて不可欠だというふうに思っております。
そういう意味で、県民の皆様と意識を共有して、問題意識を共有して、ビジョンも共有して取り組んでいくということが極めて重要なことと思っています。
そのため、まず信州環境カレッジの機能を強化していきたいと思っております。WEB講座開設いたしましたが、さらに学校や地域・企業向けの講座も充実させていきたいと思っております。また、ゼロカーボンミーティングも今後随時開催をして、皆さんと一緒に取組を発信していきたいと考えております。
加えて、多くの皆さんと連携しなければなりませんので、「ゼロカーボン実現県民会議」を設置、始動して、多くの皆さんと一緒に取り組む環境を作っていきたいと思います。
また、やはりこれからの世代を担う若者達の動きが極めて重要でありますので、そうした若者の活動を応援していきたいと思っております。COP26には、ぜひ県内の若者を派遣していきたいと思っております。
様々な困難を乗り越えながら、ゼロカーボン社会を作っていかなければいかない訳でありますが、その基本はやはり学びと自治だというふうに思っております。私自身も多くの皆様方と積極的に対話を行わせていただき、学び、そして連携の場を更に充実させることによって、県民の皆様方とともにゼロカーボン社会を目指す、そうした意識の醸成に努めていきたいと考えております。
[中川(博)議員の再質問]
ゼロカーボンに向けて、どう危機感を共有するのか考えると、かつて信州は夏場でもクーラーがいりませんでしたが、近年ではクーラーなしでは寝られないほど暑さが夜まで残ります。また、寒い冬の信州の風物詩である御神渡りも、今年は見ることができませんでした。
ただ、危機感だけでは人は疲れてしまいます。それゆえに、人は慣れてしまいます。
新型コロナ禍で、会議や講演会がWEBで多く開催されるようになりました。これは、移動によるCO2排出を削減することになりました。省エネ家電を使えば電気料がお得になります。
農林水産省も、CO2削減に向け、有機農業の面積を現在の40倍、100万ヘクタールまで増やす戦略を発表しました。CO2を土の中に閉じ込めることが大きな効果を生むという研究もあります。CO2削減は面白い、楽しいことだ、というインセンティブがあれば、より積極的に取り組むことができるということも、同時に考えなければならない課題だと思います。
[中川(博)議員の質問]
自家用車に依存しない地域づくりについてお伺いいたします。
電気自動車や燃料電池自動車の導入に向け、急速充電設備設置支援が予算化されていますが、電気自動車の電気が化石燃料や原子力発電の電気では元も子もありません。水素をつくるためにも電力は必要です。ちなみに、川中島水素ステーションにおいては、1回の充電に必要な56㎥の水素をつくるのに3,700kWhの電力が使われていますが、これは水力発電でつくられた電気です。
ですから再生可能エネルギーを基本とした充電設備とすべきと考えますが、環境部長の見解を伺います。
[猿田環境部長の答弁]
再生可能エネルギーによる充電についてというお尋ねでございます。
昨年4月に公表いたしました「長野県気候危機突破方針」におきまして、2050年度時点で県内の最終エネルギー消費量を上回る再生可能エネルギーを生産し、ゼロカーボンを実現することとしております。
交通分野におきましても、電気自動車等への転換により、単に走行時に二酸化炭素を排出させないだけではなく、そのエネルギー源を再生可能エネルギー由来の電力とすることを前提としております。
こうした観点から、令和3年度当初予算案に計上いたしました「電気自動車用急速充電設備の整備・運営事業」におきましても、使用する電力を100%再生可能エネルギー由来としているところでございます。
[中川(博)議員の質問]
県民の生活スタイルをチェンジしていく一つの方法として、マイカーに依存しない暮らしを目指すことが重要であり、そのためには移動手段の主体を地域公共交通にしていく必要があります。脱マイカーに向けてどのように取り組んでいくのか、環境部長にお伺いします。
[猿田環境部長の答弁]
脱マイカーに向けた取組についてでございます。
ゼロカーボンという観点からマイカーを捉えた場合、電気自動車や燃料電池自動車などへの乗り換えにより脱炭素化するだけではなく、他の交通手段へ転換することにより、自動車の総走行距離、ひいてはエネルギー消費量を減少させることが必要です。
こうしたことから、ゼロカーボン戦略推進本部において取りまとめました重点施策(案)におきまして「公共交通、オンデマンド交通、MaaS、グリーンスローモビリティ等を地域にふさわしい形で導入し、『歩いて楽しめるまち』や『持続可能な中山間地』を実現」するという方向性を示したところです。
脱マイカーについては、「信州スマートムーブ通勤ウィーク」や「バス・電車ふれあいデー」といった従来からの取組を継続するとともに、まちづくりや地域づくり、在宅勤務やWEB会議といった働き方、さらにはDXによる全体最適化など、より広い視点から取り組んでいく必要があると考えております。
[中川博司]地域公共交通は社会インフラである。したがって、無料にする社会実験に取り組んではいかがか。
[伊藤企画振興部長]このような実証実験は、これまでも県内外で行われている。本県においては、昨年度、令和元年度にしなの鉄道沿線で「エコ通勤促進モデル事業」として実施した。この事業は、沿線企業に参加を募り、期間中、鉄道やバスの運賃は、県としなの鉄道が負担し、通勤手段を自家用車から公共交通機関への転換を図るといったもの。残念ながら、期間中に東日本台風災害が発生したことなどから、参加企業数は予定には至らなかったが、参加者に対し行ったアンケートによると、通勤に鉄道を利用しない理由として、「運賃が高い」との回答もあったが、むしろ「自宅から駅、駅から事業所間のアクセス」とか、「移動中の時間が拘束されることへの抵抗感」などが多く挙げられたところ。このことから、自家用車から公共交通機関への転換には、運賃の面だけでなく、住宅や事業所の立地、通勤者の勤務形態、公共交通の状況など様々な要素を踏まえて、先ほどの環境部長の答弁にもあるように、街づくりなどの観点も踏まえ、多角的に対応策を検討していく必要があると感じている。今後とも、事業者や市町村、関係部局と連携しながら、生活の移動手段確保の面だけでなく、ゼロカーボンという意識も踏まえて地域公共交通の利便性向上と利用促進に取り組んでまいりたい。