【中川】農林水産省、消費者庁、環境省が連携して、SDGsの2030年までの達成を目指し、持続可能な生産・消費を広めるための活動「あふの環2030プロジェクト」が、食と農林水産業に関するサステナブルな取組動画を募集する「サステナアワード2021 伝えたい 日本の"サステナブル"」を実施し、全国から92の作品が寄せられ、2月14日授賞式が行われました。そのなかで長野県松川町の「有機農業届けたいの思い」が、優秀賞(審査委員特別賞)を受賞したことは、長野県が有機農業を進めていくための弾みになることで、大変喜ばしいことです。
そこで、ゼロカーボンの視点から農業政策について何点か提案をさせていただきます。一つは、生ごみの堆肥化による循環農業の確立です。国連の気候変動に関する政府間パネルIPCCは、食料の生産・消費・廃棄全体の食料システムが、温室効果ガスの21~37%が由来すると推定しています。また、世界で食料生産の3分の1が廃棄されているという報告があります。食品廃棄物を埋めればメタンガス、償却すれば二酸化炭素を発生させます。食品ロスを削減することや生ごみの堆肥化は、実はゼロカーボンの政策だということです。これは古くて新しい話ですが、2001年に「食品リサイクル法」が制定され、生ごみのリサイクルが始まりました。2019年には「食品ロス削減推進法」がつくられました。
あらためて、県農政部が関係部局と連携して、生ごみの堆肥化等による循環農業を展開してはいかがでしょうか。
【農政部長】地元で生産された農産物が地域内で消費され、その残渣が堆肥となって農地に還元されて、再生産につながることは、持続可能な食料システムの構築の観点からも有効と考えております。県内においても堆肥の材料の一部に生ゴミを利用している事例はありますが、すべての材料を生ゴミとすると水分量も多く堆肥化が容易ではないこと。異物混入を防ぐために徹底した分別収集が必要となる事から課題が多いと認識しております。
一方で、農地への散布は環境にやさしい農業を推進するうえでも重要であることから、農政部としましては、堆肥化施設の整備や製造された堆肥の有効活用を支援するとともに、今後、生ゴミの堆肥化をどのように実用ベースで乗せることができるのかを関係部局と連携し検討を進めてまいります。
【中川】二つ目、地産地消の強化です。これも古くて新しい話ですが、県農政部が昨年12月に行った「長野県環境にやさしい農業推進研修会」で、セブンイレブン・ジャパンの取り組み報告がありました。長野県内のセブンイレブンでは、コメ・そば・うどんは100%長野県産を使用するように切り替えることで、お客様・地域経済・セブイレブンがウインウインの関係になる。キュウリは曲がっていてもスライスして売るので規格外でも買い取っている、信州産丸ナスも使っている、輸送でも段ボールからコンテナに変えて、フードロスにも取り組んでいるというお話です。これらが、ゼロカーボンに資することは言うまでもありません。
これも、県農政部と関係部局がタッグを組んで地産地消の運動をゼロカーボンを推進する観点から、取り組みを強化してはいかがでしょうか。
【農政部長】脱炭素社会にもつながる地産地消の取り組みの推進にあたっては県民の皆さんの理解促進を図るとともに、県内における生産者と食品企業等との結びつきを拡大していくことが重要と認識しております。このため、今年度は、県産食材の応援消費を促す地産地消フェアを開催するとともに、地元産を選ぶことが環境に配慮した消費につながることについて、テレビや新聞等を活用して広く情報発信いたしました。セブン-イレブン・ジャパンの取り組みもその一貫として実施したものでございます。また、生産者と食品企業等との双方が意見交換できるプラットフォームを設置し、例えば、県産キノコの学校給食での利用拡大に向けた商標づくり等、新たな地産地消の取り組みも促してまいりました。
来年度はさらに生産者と食品企業や小売店等との結びつきを強化し、県産食材の利用拡大を図るとともに、県内の有機農産物の学校給食での活用を推進することとしており、引き続き、関係部局とも連携した地産地消の取り組みを広げてまいります。
【中川】三つ目、最近化学肥料の値上がりが著しいようです。窒素肥料は天然ガスから、リン肥料はリン鉱石から、農薬も石油から作られるものが多いわけです。そこで注目されているのが緑肥です。松川町でも実際ソルガムなどの緑肥が使われています。窒素分を増やすには大豆との輪作、リン酸を活用するにはヒマワリなど、様々研究がされてきているようです。有機農業推進で化石資源をできるだけ使わなくていい。コメの価格が下落していますが、有機で付加価値を付けることもできます。
国は、「みどりの食料システム戦略」実現に向け、「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案」を今国会に提案しました。いよいよ国としても本格的に有機農業の推進に動き始めていると思われます。
先に紹介した松川町は新年度の国の施策である有機農業の生産から消費まで一貫した取り組みを支援するオーガニックビレッジに取り組むと聞いています。国は2025年までに100市町村でオーガニックビレッジを目指しています。これまで長野県として行ってきた有機農業プラットフォームの取り組みが、県内各地で有機学校給食の取り組みや有機農業の推進に取り組む地域や自治体に力を与えてきました。長野県内に多くのオーガニックビレッジが生まれることを期待しています。
あらためて、県農政部としての有機農業推進に向けた決意をお伺いします。
【農政部長】県では有機農業を農業の自然循環機能を大きく増進し、農業生産に由来する環境負荷を軽減する栽培として、環境にやさしい農業のひとつに位置づけ、平成21年に策定した県の有機農業推進計画に基づき推進しております。また、持続可能な社会の構築に向けて県が推進するSDGsやゼロ・カーボンの観点からも有機農業への期待と役割は大きいものと認識しております。
このため、農政部では有機農業の専任担当を配置するとともに、県有機農業推進プラットフォームを開設し、勉強会の開催や販路開拓等、有機農業の推進を支援しているところです。今後は、「みどりの食料システム戦略や関連法制度の状況も踏まえ、現在策定を進めている、「次期長野県食と農業農村振興計画」の検討過程において、多くの皆様のご意見をお聞きしながら、有機農業の推進を計画に位置づけ、さらなる拡大につなげてまいりたいと考えております。