■「子ども手当て」「高校授業料無料化」
鳩山政権は、12月25日新年度予算を発表した。特徴は、一昨年秋以降の世界同時不況が続く中で、「2番底」が懸念される中、子ども手当ての新設・高校授業料の無償化など社会保障関係費が前年比9.8%増、文教費は5.2%増となり、歳出全体の29.5%を占めたこと、一方で公共事業関係費が6.3%にとどまるなど、いわゆる「コンクリートから人へ」を実現しようとしている。とは言っても、公共事業関係費は、金額では、20年前の1990年とほぼ同水準である。
目玉商品ともいえる「子ども手当て」は、中学校卒業までの子ども一人当たり月額1万3千円(年額で15万6千円)を支給することとなった。一方で、中学生以下の扶養控除38万円が廃止されることになりました。税率が5%とすれば、年額で1万9千円の増税となり、差引13万7千円の負担減となる。
また、「高校授業料年12万円が徴収されない」こととなる変わりに、特定扶養控除25万円が廃止となり、同じく1万2千5百円の増税となり、差引10万7千5百円の負担減となる。
子どもを抱える親からすれば、期待が大きな政策であり、是非とも国会の論戦を通じて実現を図らなければならない課題である。
■マニフェスト施策の財源は?
さて、心配な財源である。「子ども手当て1.7兆円」「高校授業料の無償化0.4兆円」のほか、「農業の個別所得補償0.6兆円」「暫定税率0.2兆円」「高速道路無料化0.1兆円」「年金記録問題0.1兆円」「雇用対策170億円」で、計3.1兆円を必要とする。
これらの財源は、事業仕分けや予算要求削減により3.3兆円を確保したと発表されていて、「やればできるじゃないか」と評価されている。今回事業仕分けの対象となった事業は、全体の10%程度と言われており、さらに今後全体の政策評価を進めていかなければならないし、国と地方の役割を明確にし、財源を地方へ移し、「地方主権」を確立していかなければならない。
なお、雇用対策の170億円は、社民党が強く主張してきた「雇用保険の適用範囲を6ヶ月以上雇用見込み」から「31日以上雇用見込み」に緩和することと、失業後1年間は在職中と同程度の負担で医療保険に加入できる制度である。
■国の借金は?
税収の落ち込みは引き続き大きく、当初予算37.4兆円で、不足する財源確保のために発行する国債は44.3兆円と、昨年に続き税収が公債金を下回っている。実に戦後の昭和21年度以来のことである。財務省の試算では平成22年度末で国及び地方の長期債務残高は862兆円となると見込まれている。
平成22年度税制改正大綱も発表され、所得税の累進課税の強化が課題としつつも、法人税については租税特別措置を抜本的に見直し、課税ベースを拡大しながら税率を下げる方向で検討されている。
社民党は、高額所得者への負担を求め、所得の再配分機能を強化することと、法人税の見直しを求めてきた。新政権のもとで税のあり方を抜本的に議論をすることを強く求めていきたい。