(1)正規雇用への就労支援について
【中川】次に、昨年6月県議会私の一般質問で、失業者の雇用の受け皿づくりについて産業労働部長から「経済活動の本格的な回復が見られるまでの間は、雇用情勢の推移に十分注意を払うことが必要ですが、現在、人手不足分野もあることから、業種や職種によるミスマッチの解消や、訓練による人材育成の充実等により、一人でも多くの皆様を良質な雇用に結びつけられるよう支援に努める」と答弁がありました。良質な雇用、つまり正規雇用の職場への就労支援ということですが、どのような具体的な取り組みが行われ、どのような成果が得られているのか、また課題があるとすれば何か産業労働部長にお伺いします。
【産業労働部長】正規雇用の職場への就労支援の取り組みと成果・課題についてでございます。正規雇用の促進については県内14のハローワークによる職業案内に加え、県のジョブサポや正社員チャレンジ事業による求職者の実情に沿ったキャリアコンサルティングとマッチング支援を行っているところでございます。昨年8月のジョブサポ立ち上げから本年10月末までの累計で2,100件の求人開拓を行い、1,984人の求職申込みのうち722名の方が就職に至っております。このうち258名の方が正規雇用であり、失業者の雇用対策として一定の成果があったものと受け止めております。他方で業種によっては求職者の希望と求人のミスマッチが顕在化してきており、特に建設業・製造業、福祉・介護事業、農林業などの分野では人手不足の状態が長く続いております。このため、こうした分野の事業者に対しては職場環境改善アドバイザーによる労働環境改善のサポートを、求職者に対しては資格取得などのキャリア形成支援を進め、ミスマッチの解消を図っていきたいと考えております。
(2)「就労の壁」の課題について
【中川】これまで特例貸付の延長などが行われてきていますが、国も生活困窮者も貸付に依存する状態になっているのではないかとマイサポの担当者も心配をしていますが、いかに生活を立て直すかが根本的な解決の道です。かつての失業対策事業のように公共事業を切り出すことや、雇用促進住宅が必要なのではないかという意見をお聞きします。また、昨年度スタートした「緊急就労支援事業」は、2か月以上雇用した事業主には賃金の一部を助成している制度で、「直接雇用型」と「体験研修型」があります。マイサポの担当者からは「事業者から人手不足でハローワークに求人を出し続けているが応募がなかったが人材が確保でき、なおかつ生活困窮者を支える地域貢献ができたと感謝された」と評価の高い事業となっているようです。
以下はマイサポでの相談内容から「就労の壁」となる特徴的な課題として次のような事例があります。
〇「この仕事以外はしたことがない」という食堂や居酒屋、スナック、一人親方個人事業主と言われる皆さんの新たな就労の場をどうしていくのか。
〇低年金で働き口がない高齢者も相談に訪れています。マイサポ長野市では、およそ1年間の緊急小口資金の申請者1,250人中60代以上が25%を占めています。「年金が少ないので再々雇用で働いているが契約更新にならなかった」「80歳だが、せめて医療費分だけでもと働いていたが仕事が無くなった」と、高齢者の貧困も顕在化しています。生涯現役と言いながら、65歳を過ぎた高齢者にとって就労の壁が高い現実をどうしていくのか。
〇女性・ひとり親の方の相談は松本でも長野でも増えています。雇用形態がパート等の非正規雇用が多く、有休などもなく休業イコール減収、学校が休業の時は「預かってくれる人がなく休むしかない」「自分が感染したら子どもはどうなるのか」といった「孤立」を感じさせる方も多くいるようです。
以上のような「就労の壁」があるのが現実です。こうした課題を踏まえたうえで、
①生活困窮者の生活を立て直すための就労をどのように促進していくお考えか。
②地域の雇用を創出するために、県として仕事をつくることを考えてはどうか。
③緊急就労支援事業を拡大するためにさらに県として支援をしていくお考えはないか。
以上、産業労働部長に聞きします。
【産業労働部長】まず、生活困窮者の生活立て直すための就労の促進についてでございます。子育てや介護のために就労時間に制約のある方や必要なスキルを身につけられないなど、さまざまな事情により就労できない方々にはそれぞれの実情に合わせた就労先の開拓や生活支援が重要と考えております。県といたしましては、ジョブサポや緊急就労支援事業による丁寧なマッチング支援とともに良質な雇用に結びつけられるように、リカレント教育やリスキリングのサポートを行ってまいります。また、先に閣議決定された国の経済対策には500億円規模の労働移動支援事業が位置づけられております。当事業は就労に向けたカウンセリング・トレーニングを実施した上で、派遣期間後に派遣先企業と直接雇用を結ぶことを前提にした紹介予定派遣を活用するなど、きめ細かな伴走型の支援を行うことで早期の再就職を目指す仕組みと聞いております。こうしたコロナ禍での国の支援策も連携しながら、雇用の創出に繋げてまいりたいと考えております。
次に、県として仕事を創ることについての考えはないかとお尋ねでございます。かつてリーマンショックの時の有効求人倍率は全国が0.42、本県が0.39まで低下し、その際に実施されました緊急雇用創出基金事業は短期的な雇用効果をもたらしたものの、期間終了により再就職をしなければならないという課題もございました。現在10月の有効求人倍率は全国が1.15倍、本県が1.39倍となるなど持ち直しの傾向にあります。こうした雇用情勢も踏まえますと可能な限り求職と求人のミスマッチを解消し安定した雇用に結びつけることが望ましいと考えております。
最後に、緊急就労支援事業を拡大支援にする考えはないかとのお尋ねでございます。当事業は昨年6月の制度開始以降累計で280件の実績がございました。マイサポの相談員のマッチング支援によってこれまで未経験だった農業や福祉分野に就労する事例や、過去のスキルを生かして再就職に至ったご高齢の方もいらっしゃいます。今後の事業の継続・拡大につきましてはコロナ禍の状況も踏まえつつ寄り添った支援が出来るよう関係機関等の皆さまと検討してまいります。以上でございます。