リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

バロック音楽の旅14第2回講座

2021年10月24日 23時39分12秒 | 音楽系
バロック音楽の旅14第2回講座が終了しました。第2回はいつもテーマをしぼった内容のレクチャーです。今回のお題は「恵まれない大家に光を!」で昔は大活躍していたのに何らかの理由で今では一般的に忘れ去られている作曲家に焦点を当てます。



光を当てる作曲家には次の7人を選びました。

1.バクファルク
2.マシッティ
3.ヴァイス
4.ピゼンデル
5.ハッセ
6.グラウプナー
7.クラウス

ヴァイスはリュート愛好家にはもちろん知れ渡っていますし、リュート以外の古楽愛好家にもそこそこ知名度がありますが、一般的にはまだまだという感じがしますのでとりあげることにしました。リュート奏者で知名度ナンバーワンは?多分ダウランドでしょうね。

バクファルクは旧ハンガリー帝国出身のルネサンスリュートの大家、マシッティは後期バロックのヴァイオリンの大家、ピゼンデルとハッセはヴァイスと同じドレスデンの宮廷楽団に所属していた大家で、ピゼンデルはヴァイオリン奏者、ハッセはオペラの作曲で著名だった人。グラウプナーはダルムシュタットのお城に長らく大量の作品が保管されていて20世紀も後半になって突如脚光を浴びているバロック後期の作曲家。クラウスはモーツァルトの陰に隠れてしまった夭折の天才です。

なぜ光が当たらなくなったのかについては次の観点を設定してレクチャーを進めていきました。

A.「大きな木」のかげになった
 同時代に超有名な作曲家がいた
B.何らかの事故
 戦争、火災、伝染病などで作品が失われた
C.何らかのさまたげ
 楽譜の書き方が一般的でなかった
 演奏するのが難しすぎた
 遺産相続

A.に該当するのはマシッティ、クラウスです。マシッティは同時代のヴィヴァルディやコレッリのかげに隠れてしまっているようです。

B.にはバクファルクとハッセです。バクファルクはペストの感染で亡くなったのですが、その際彼が所有していた大量の自作品も一緒に焼却処分されたと言われています。ハッセは出版直前のオペラ作品が戦争で焼失しています。

C.はグラウプナー、ヴァイスですがバクファルクも当てはまるでしょう。グラウプナーは彼の死後遺産相続で遺族と彼が奉職していた宮廷との間でもめ、裁判になり結果として作品がながらく宮廷に「死蔵」されるに至っています。ヴァイスやバクファルクは作品がタブ譜で書かれているのも一般の人に全貌が伝わりにくかったと思います。今では五線譜版もありますので必ずしもそうではありませんが。ヴァイスはまだ比較的優しい曲もありますが、バクファルクはどれも難曲揃いで、そのことも一般に普及しづらかった一因になっているのかも知れません。

次回第3回からはコンサートシリーズです。次回は11月7日で、ヴィオラ・ダ・ガンバの上田牧子さんと私のコンサートです。