リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

NHKクラシック音楽館

2021年10月12日 16時15分56秒 | 音楽系
日曜日に放送されたNHKのクラシック音楽館、「日本のピアノ」は見応えがありました。18世紀に大黒屋光太夫が聴いたことがあるピアノ音楽の話から始まって現代に至るまでの日本におけるピアノ音楽を辿った力作でした。

演奏はどっかのライブの引き回しではなく、全てスタジオでとったものです。一般的にはほとんど知られていないと思われる戦前の大家、大澤壽人の大作、ピアノ協奏曲第3番「神風協奏曲」が全曲演奏されたのには驚きました。それもスタジオライブです。TVの(ラジオも)クラシック音楽番組がほぼ死に絶えている中、これだけ硬派の番組を作ったNHKに拍手です。

ちなみに「神風」は昭和12年に東京・ロンドン間を飛行するという偉業を成し遂げた神風号のことです。特攻隊の協奏曲ではありません。神風号は朝日新聞社が制式化前の九十七式司令部偵察機を陸軍から譲り受け長距離飛行に適するように改造を加えた機体です。

それに続く松平則頼の主題と変奏(ピアノとオーケストラの曲)、早坂文夫のピアノ協奏曲といった大曲も全曲演奏されました。最後は矢代秋雄の小曲でしめるというなかなか味のあるエンディングでした。これだけのものを制作する企画力も相当なものでしょうけど、制作費も相当かかったことでしょう。

武満徹なら知っているけど戦前の日本の作曲家なんて大したことはないと、どっかで自虐史観がすり込まれてしまった方、そしてそもそも何もご存じでないという方もぜひこの番組を見てもらうといいと思います。17日までNHKのサイトでお見逃し配信を見ることができます。最近はNHKに対して色々雑音もあるようですが、NHKもちゃんとやっとるんや、ということを示した番組でした。