リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

大誤解の世界(1)

2022年01月25日 09時06分07秒 | 音楽系
リュートという楽器はいまだに誤解が多くなかなか世間一般の理解が進んでいない感じがします。リュートの起源が中東の方らしいと説明すると、説明された方はシタールあたりにイマジネーションが飛んでしまったりします。いえいえヨーロッパの楽器ですよ、と言ったら「ああ、あの映画第3の男の音楽の?」と来て、またあらぬ方向に行ってしまいます。えーっとそれはツィターという楽器で民族楽器ですよ、リュートは古くからヨーロッパで使われていたというと「ああ、吟遊詩人の楽器ですね!!」と来ます。

まぁ吟遊詩人の楽器というのは全くの間違いではありませんが、私がやっているリュートの世界とはまだまだ遠く離れています。ヨーロッパの人は文化的基盤があるので、リュートという楽器の認知は大体きちんとしています。日本人に琵琶の説明をしたときも、大誤解をされないのと同じです。私の経験では日本人にリュートのことを説明するには一番最初に「クラシック音楽の楽器」「バッハ、ヘンデル、ヴィバルディ」という語句を入れておくのがいいようです。

リュートと同じように、「中世音楽」も誤解に満ちています。さっき言いました吟遊詩人のファンタジーとも結びついている感じもしますが、エスタンピー風のダンスミュージックをアイルランドあたりの民族楽器やリュートもついでに入れて演奏する曲が中世の音楽だと思っている向きが多いです。いろんなごたまぜの古楽器や民族楽器を使って演奏活動をしているプロ楽団も古くからありますが、聞いている方はそれを中世の音楽とかもっとざっくり「古楽」だと思い込んでいる人も多いみたいです。でもその音楽は日本人が聴いたら中世の音楽だと感じさせるように作られた創作音楽です。

ではヴァイスやダウランドを演奏するときのように、実際に文献や楽器をきちんと検証した中世音楽というのはどんな音楽なのでしょうか。