リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

教育的かつ政治的編曲

2023年10月17日 16時38分59秒 | 音楽系
先日編曲しましたsilent nightですが、その後2,3回手直しをしてもう完璧と思っていたんですが、強烈なダメ出しがありました。音そのものではないんですが、パートの割り振りに問題があるとのことでした。

編曲は、コーラス、チェロ1&2、ピアノの4パートですが、問題となったのはチェロ1&2です。この2つのチェロパートを初級から中級までのチェロ教室の生徒30人あまりが弾くのです。

編曲は次のような構成です。

ピアノによるイントロ→1stコーラス(ソロチェロ=チェロ1とピアノ伴奏)→2nd&3rdコーラス(全員、この部分ではチェロ1はオブリガートを弾きます)→ピアノによるポストリュード

1stコーラスは中級の生徒の中でも特に上手な生徒2,3人でメロディを弾きます。静かな感じです。2nd&3rdコーラスはソロをとった生徒達+残りの中級者がチェロ1パート演奏、そして初心者がチェロ2を演奏します。ここでは多分3rdコーラスで先生が会場の皆さんもどうぞ!式に会場全体が盛り上がります。

ダメ出しが出たのが、ソロ=メロディを弾かなかった中級のまあまぁ弾ける生徒から自分のパートには全然メロディがない!という苦情が出そうだと言うことです。メロディなら弾けるのに、それは弾かせてもらわず、難し目のオブリガートを弾くなんかいやだー!という声が出てくる、と指導のセンセはおっしゃいます。

うーむ、そういうもんなんですね。なかなか難しいです。全員が花になりたいというような心構えでは音楽は成立しないんだよ。花ばかりの植物なんてないでしょ?葉っぱも必要、根も必要だよ。というのは正しいのですが、これはプロ目線からの言いぐさなんでしょう。まだまだメロディは全然弾けないレベルの生徒はチェロ2(バスを弾く)で文句はでないでしょうが、それ以上でメロディを弾ける生徒にはどこかでメロディを弾かせるようにするという教育的かつ政治的な工夫が必要なわけです。

そこでもうひとつパートを作って、2nd&3rdコーラスでメロディを合唱隊のオクターブ下で弾くパートを作りました。これは実はよく考えてみると大正解で、本番では3rdコーラスで会場全員で歌うことになるのですが、歌う人は子供、女性、男性がいて男性は1オクターブ低い声で歌います。その音をチェロ2がなぞることになります。つまり改良案は教育的、政治的だけでなく音楽的にも最適解だったのです。