リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

フランスです。

2013年07月05日 03時17分10秒 | 音楽系
いまフランスにおります。スティーブン・マーフィーというリュートの製作家に楽器製作を頼んでいまして、彼に会って細かい話を詰めるために来ております。私は楽器を注文する際には必ず製作家に実際に会って作ってもらいます。作る方からしてもどういう人が注文しているのかわかった方が作りやすいでしょうし。

よく愛好家の方がネットかなんかで適当に調べて注文して、届いた楽器がカスみたいだった(失礼)ということがありますが、よく知られている製作家に注文し、さらに実際に会って詳細を詰めるという手順を踏めば外すことはまずありません。

海外の製作家に楽器を頼む場合、安い楽器は必ずそれなりのものです。安くていいものはないというのが通り相場です。いいものは必ずそれなりの値段がします。ユニクロが安くていいので、リュートもひょっとしたら安くていいのがあるかも、というのは海外では通用しません。

ということで手間暇もカネもかけていますが(笑)、スティーブンが住んでいるところはほんとに田舎でした。スイスのモーリス・オッティガーが住んでいるところも相当田舎ですが、それ以上です。モーリスの家は、電車を降りて、車で10分程、歩いて行こうと思えば行けなくはない距離です。でもスティーブンの家は、アヴィニヨンの駅から車で1時間あまりのところで、最寄りの公共交通機関はなしです。



9時40分頃にアヴィニヨンの駅前で待ち合わせる約束でしたので、駅前に立っていましたら、ぴったり約束の時間に彼は現われました。向こうから私を見つけてくれました。まぁそうですわね。東洋人はアヴィニヨンの駅前では目立ちますから。彼はもうかなり前からフランスの現在のところに住んでいますが、イギリスに生まれ一時はオーストラリアに工房を構えていたことがありました。当然イギリス風の英語をしゃべります。

彼に注文している楽器は、かつて某貴族の個人所有で、現在はボストンの博物館にある、アンドレアス・ベールの楽器のコピー楽器です。ボストンにあるオリジナルは弦長が65センチで13コースの楽器ですが、ブリッジの位置からもとは11コースで途中で13コースに改造したようです。オリジナルは、象牙のリブを持ち、ペグボックスの裏側には透かし彫りが施されているというゴージャスなものです。私がお願いしているのは11コース、つまりオリジナルの元の姿の楽器で、リブはさすがに象牙ではなく、普通のメープルです。でもペグボックス裏の装飾はお願いすることにしています。


写真は別の楽器ですが、こんな感じになります。

工房に入ってみると、もうすでに少し製作は開始されていて、表面板のローズ彫まではあがっていました。


オリジナルのロゼッタと同じ柄です。


リウト・ア・ティオルバート用の型


同じくリウト・ア・ティオルバート用の型です。

件の楽器は9月頃にはできるとのことです。私の生徒も実は彼に注文を出していまして、それらも含めて楽器の話をしていましたら、あっという間に3時間あまりが経過してみました。


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2 コメント

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いい楽器です! (やまねこ)
2013-07-06 17:25:08
中川先生、早速にアップありがとうございます。すごくゴージャスな高級感のある、真珠のような音色がこぼれ落ちてくるようです。・・・・・あと2ヶ月ですね。

 ところで、モーリスさんの楽器といい、マーフィさんといい、先生のお弟子さんは、皆さんお金持ちですね!!!
うらやましいです。でも、なかなか個人で言葉の壁を乗り越えて、楽器の詰めの打ち合わせで海外へとは、敷居が高いですョーー。
 私なんぞには、製作者の名前で買うしかないというのが現実です。トホホ・・・・・・。
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re (nakagawa)
2013-07-06 17:44:38
はい、私の生徒さんはみなさん私よりずっとお金持ちでうらやましい限りです。(笑)
国内でもそうでしょうけど、製作家に直接製作を依頼するときは製作家にあっていろいろ教えてもらいながら楽器の仕様をつめた方がいいと思います。ま、どっかの専門店である程度の保証つきで買うのならそういう必要はないでしょうけど。
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