院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

特任看護師とは何か?

2011-12-12 00:09:22 | Weblog
 1970年代初め、一県一医大論が実行に移され、医大のない県に国立医大が建てられた。そのとき、私立の医大が雨後のタケノコのように設立され、中には金さえ出せば学生の実力は二の次というような私大が現れた。

 同時に、それまで国家試験の中で最も易しいといわれていた医師国家試験が急に難しくなった。門戸を広げた分、出口を狭くしようという文部省の方針であることは明らかだった。
 
 当然、金で入った学生の質は低く、医師国家試験に合格しない者が続出した。医学部は卒業したのに、何年浪人しても国家試験に受からない者が出てきて、小さな社会問題となった。

 そのとき、政治家の一部に、そのような者への救済案として「補助医師」のような、医師に準じた資格を造ろうと言い出す者がいた。むろん、各方面の大反対に遭って、その案は葬り去られた。

 そこで、このたびの「特任看護師」を創設せよという議論である。特任看護師とは、医師の指示なしでも、ある程度の医療行為を自分の判断でできるような看護師のことである。

 この案に、かつての国家試験落第生のための「補助医師」を思い出した。「看護師」というと女性を思い浮かべがちだが、最近はけっこう男性も多い。だから、特任看護師の資格が創設されると、それを目指す男性が増えるだろう。

 現在のところ、看護学校の入学試験は医学部の入学試験に較べて、圧倒的に易しい。だから、入学試験が易しい部門から入って、最終的に特任看護師という、ある程度医療に権限をもった資格を得ようとする者が出てくるだろう。

 これを、みなさんはどのように考えるだろうか?

 医学部の入学がもっとも難しかった団塊の世代の私としては、何か割り切れないものを覚える。私の時代は、大学受験生も多く、かつ医学部定員が4,000人しかなかった。今では18歳人口が半分近くに減っており、かつ医学部定員は9,000人である。そこに、さらに特任看護師を造ると言われても、「はい、そうですか」とはすぐに言えないのが本音のところである。