院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

サプリメントの存在価値

2013-04-01 03:02:39 | 医療
 健康診断で医者は「糖尿病の気があるから、食べ過ぎず運動をするように」なぞと言う。だから、一般人は、エレベーターに乗らずに階段を上ったり、健康食品を食べたり、それぞれに努力している。

 飲料メーカーは「脂肪を燃えやすくする」というお茶を宣伝している。「トクホ」という指定を栄養食品協会が発行しているが、「トクホ」が普通の健康人に効くのかどうかは、学会では眉唾だとされている。

 厳密な医学の領域では、その治療法が本当に効くのかどうかを検証するために、EBM(科学的な証拠にもとづいた医療)が提唱されてきた。だが、最近ではEBMで検証できるのは一部の医療行為に限られることが分かってきた。

 つまり、厳密であらねばならない医学の領域でさえ、「絶対に効く」とか「絶対に効かない」ということを確信をもって言えることは少ないのだ。(妊婦の帝王切開でさえ99%は要らない手術だと主張する論者もいる。)

 ちょっと頭が痛いからとすぐに病院を受診するような国は日本しかない。外国の人が頭痛に無頓着なわけではない。国によっては病院を受診すると、ものすごくお金がかかる。または、お金がかからなくても、何週間も待たされる。

 頭が痛いと言ってただちに安価で診てくれるのは日本だけである。日本の医者は見逃しを極端に恐れるから、すぐにCTやMRIを撮る。こんな国は日本以外にはない。その結果、10万人か100万人に一人くらい脳腫瘍が発見される。つまり、残りの99.99%には必要がない検査だったわけだ。

 ということは、99.99%が無駄な医療費ということになる。でも、この金額は脳腫瘍を発見するためのコストである。(脳腫瘍を発見するのに、それだけコストをかける必要があるかどうかは別にして。)

 科学的な観点からは、階段を上る運動も「トクホ」も、巷で行われている体操教室も健康にはほとんど役立たない。

 今、テレビでしきりに宣伝しているコンドロイチンやグルコサミンやコラーゲンといったサプリメントも、健康にはまったく役に立たない。(体内で分解されてしまうだけである。)

 でも、国民がイメージ的に元気になったような気分になってくれるこれらの民間療法は、医療費の削減に大いに役立っている。医療費は保険料と税金である。病気ともいえないような人に病院にかかられると、それらが食われる。

 一方、「トクホ」や体操教室やサプリメントは値段が高かろうがなんだろうが自己負担である。利用者がそれらによって元気になったと勘違いしてくれれば、こんなにめでたい話はない。

 サプリメントはうどん粉を丸めた「薬」と一緒で、見方によっては詐欺行為のようにも見えるけれども、おおやけの医療費を削減するのに大いに役立っている。

 厚労省は、サプリメントは健康には役立たないと知っている。なのに禁止しないのは、以上のような理由からである。